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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
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ウィントン・マルサリス/スタンダード・タイム第3集

2009年12月16日 23時46分39秒 | JAZZ
 マルサリスのスタンダード・タイム・シリーズ、第3弾。前2作は第2期マルサリス・バンドによるパフォーマンスだったが、こちらは第3期マルサリス・バンドのレジナルド・ヴィール、ハーリン・ライリーのリズム・セクションに、ウィントン・マルサリスの父親でピアニストのエリス・マルサリス(ついでにプロデュースはデルフィーヨ・マルサリス)という布陣になっている。こう考えると第2期マルサリス・バンドはけっこう短命だったことが分かる。1990年に出たこのアルバムの時点で、マルサリスは既に次のセクテットの構想に入ってたことを伺わせる。だからといって、このアルバムその後のブルースに入れ込んだ作品群を予見させるようなところもあまりない。スタンダードを扱っているシリーズの一枚だから、当然といえば、当然だかもしれないが、それにしても先行した2枚のアルバムに比較しても、マルサリスらしい音楽主義的、技術至上主義的な点は影を潜め、スタンダード・ナンバーをスタンダードらしく、ある意味イージー・リスニング的というか、ごくまっとうな形で取り上げている点がおもしろいというか、このアルバムのワン・アンド・オンリー的特徴かと思う。

 これはやはり父親のエリス・マルサリスの影響と見るべきだろう。エリス・マルサリスという人がどんなジャズ・ピアニストだったのか、私は歴史的にはよく知らないが、このアルバムを聴く限り、レッド・ガーランド的なカクテル風なところ、ケニー・ドリュー的な洗練を持ったピアニストのようで、そのあたりをマルサリスは慮って、つまり親父の音楽性に合わせて作られたのだろうと思う。曲はどれも2分から5分程度、アップテンポで豪快のドライブするような作品はほぼ皆無で、「スリーピング・ビー」や「波止場にたたずみ」のようなミドル・テンポで快適にスウィングするもの、あるいは「いつかどこかで」、「スカイラーク」、「イッツ・イージー・トゥ・リメンバー」といったバラード・タイプのもので絞められている。もっとも、こういうアルバムなのに親子揃って、どことなく楷書体な演奏に終始しているのは、たぶんに血筋を感じさせて微笑ましいが、今聴くとそれはそれで悪くない。以前はマルサリスのアルバムというと、新主流派風のドライブする演奏ばかりをマルサリスに期待してしまって、こういう作品には全くピンとこなかったものだが、こちらも歳をとったのだろう。久しぶりに聴いたら、特にバラード系の作品での、端正な美しさな聴き惚れてしまった。
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ウィントン・マルサリス/スタンダード・タイム第1集

2009年12月16日 00時01分16秒 | JAZZ
 都合第6集まで続いたウィントン・マルサリスの「スタンダード・タイム・シリーズ」だが、1989年のこれがその最初のものとなる(個人的には、これらに先駆けてウィズ・ストリングス物として製作された「スターダスト」をこのシリーズの0番としたいところだが....)。メンツはマルサリスの他、ロバーツ、ハースト、ワッツという第2期マルサリス・バンドの面々、つまり「ライブ・アット・ブルース・アレイ」「Jムード」と同じ最強のワン・ホーン・カルテットである。この時期はある意味マルサリスがストレートにジャズしていた頃でもあり、音楽的には悪かろうはずがない....といったところだろう。しかも、このアルバムでは全面的にスタンダードを取り上げているという点が、すくなくとも私にとっては、非常にポイントが高い。今改めて振り返ってみると、この時期のマルサリスのアルバムは、本作に加えて、これに続く第2集、そして「ライブ・アット・ブルース・アレイ」の三作あたりにとどめを指すのではないか。ジャズ名盤集みたいなセレクションがあったとすると、この三作はそれにラインナップされる価値が十分にある傑作だと思う(だいたいこの人、アルバムを作りすぎたと思う-笑)。ハイライトとなる曲を拾ってみたい。

  ラテン・リズムとよくスウィングする4ビートを交互に使う「キャラヴァン」は、こねくり回した印象になる直前でオーソドックスなジャズに収まっているバランスがいいし、マイルスを思わせる中間部のインプロヴィゼーションの段取りもいいムードだ。「パリの四月」と「枯葉」は、この時期特有のテンポの増減がマルサリスらしいテクニカルさを感じさせるが、やはりスタンダード作品ということでジャズ的ムードを逸脱していないのがいい。私の好きな「グッドバイ」は、この曲にありがちな、情念だの哀感といった側面でみると、今一歩真に迫ってこないうらみはあるが、それでもここまで美しく洗練され、非の打ち所がないバラード演奏となっているのもあまり例がないだろう、ロバーツのゆらめくようなピアノ・ソロも良く、これはこれで十分に傾聴に値する名演だ。ガーシュウィンの「霧の日」と「ザ・ソング・イズ・ユー」は軽快で都会的な演奏。例によってテンポの増減させる部分があって、そこは妙にテクニカルだったりするが、まぁ、ここでは隠し味程度だ。あと、2ヴァージョン収録された「チェロキー」はどちらも2分余りで終わる短い演奏だが、短いからこそ、マルサリスのスタイリッシュで洗練された完璧なトランペットが凝縮されているともいえ、すべからく堪能できる演奏になっている。
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