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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

ピート・レヴィン&ダニー・ゴットリーブ/マスターズ・イン・ジス・ホール

2009年12月05日 16時07分17秒 | JAZZ-Fusion
 フュージョン畑のキーボード奏者ピート・レヴィンがダニー・ゴットリーブ(ドラマー)とコンビを組んで作った1990年に製作されたクリスマス・アルバム。ピート・レヴィンという人は、弟のベーシストでスティック使いでも知られるトニー・レヴィンは有名だが(弟同様、兄もスキンヘッドである-笑)、キーボードを弾く兄の方はそれほど有名ではないようで、ネットで調べてもギル・エヴァンス・オーケストラ、ジョン・スコのバンドに居たくらいでたいしたことは分からなかった(Wikiにも彼の項目はない)。ともあれ、ギル・エヴァンスやジョン・スコとやっていたのであれば、相当な実力派ではあろう。一方、ダニー・ゴットリーブの方はパット・メセニーを筆頭にニューヨークの頂上セッション何度も顔だす知名度の高いドラマーである。

 さて、このアルバムだが、ほぼ全編に渡って2人だけで演奏されているようで、ゲスト陣はほぼ皆無、キーボードとドラムだけで作られたアルバムになっている。アレンジはピート・レヴィンなようだが、さすがにキーボード奏者だけあって、ギター、ベース、ブラス等がいないという不足感を全く感じさせることなく、シンセサイザーだけで十分にカラフルで躍動的なサウンドを作っている。また1990年という時期の製作なだけに、一部「らしい」打ち込み等もあるものの、ダニー・ゴットリーブが生のタイコを叩いているの威力は絶大で、この手の少人数で作った打ち込み音楽にありがちな、機械的な冷たさや安っぽさがない-今聴いてもほとんど感じない-のは、そもそもこの音楽がしっかりとしたアレンジの基に作られたからだと思う。多少似たようなパターンのアレンジになってしまった曲がないでもないが、全体としてはなかなか良質なクリスマス・アルバムだと思う。ちなみに日本盤のサブタイは「ニューエイジ・クリスマス」とあるが、これはどこをどう聴いてもフュージョンだと思う。目立ったところをメモってみよう。

 「あら野のはてに」の邦題で知られる「Angels from the Realms of Glory」はクリスマスらしいファンタスティックはイントロに続き、上品なファンク・リズムをベースに、途中カリプソ風なムードも加味して、いかにもフュージョン的な心地よさを感じさせるアレンジで楽しめる。ゴスペル風にアレンジされた「The First Noel(牧人羊を)」はゴットリーブのブラシに乗ってヴィブラフォン風なシンセが演奏し、「Away In A Manger」は更にムーディーでスペイシーなアレンジが印象的(同じ頃のクインシー・ジョーンズなんかに近い感じ)。「God Keep You Merry, Gentlemen」は途中フォークロア風に展開し、「Carol Of The Bells」はお馴染みテーマはシーケンス・パターンのように配置して、そこに様々なサウンド・ブレンドしていくアレンジで後半はなかなかスケール大きな展開となる。お馴染みの「Silent Night」は渋い色彩、懲りに凝ったコード進行でもって、ありがちなサンウドとは一風変わったサウンドが印象的だ。これを聴くとピート・レヴィンがギル・エヴァンス・オーケストラ出身ということが納得できたりする。
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ハイドン交響曲第35番「不意打ち」/フィッシャー&オーストリア・ハンガリー・ハイドンPO

2009年12月05日 11時16分42秒 | ハイドン
35番は全体に格調高い雰囲気を持っています。作曲の時期としては、34番からけっこう後、既にシュトルム・ウント・ドランクの頃とのことですから、明らかにBGM(というか機会音楽というべきですかね)を想定したような33,34番あたりに比べ、こちらはもう少し座って観賞する音楽みたいな多少スクウェアな雰囲気があります。第1楽章はしずしずと始まるものの、やがて力強いテーマに発展、そのピークでエレガントな第二主題が歌うように登場する段取りは、まるでモーツァルトのピアノ協奏曲の主題提示を思わせるようなところがあり、いつピアノが登場してきてもおかしくないような感じ。展開部で短調に転じてドラマチックになるあたりは「シュトルム・ウント・ドランク」的な特徴といってもいいようなところなんでしょうかね。

 第2楽章は弦楽のみで演奏されるアンダンテ。 これもエレガントな雰囲気がある楽章になっていますが、ちょっと不意打ちっぽくリズミカルなモチーフが随所に挿入されているところや、変ホ長調とのことなのに、どことなく短調のような雰囲気があるのが印象に残ります。第3楽章はいつも通りなハイドンのメヌエットという感じ、良くいうと安心して聴いていられるという感じで、悪く云えば曲の個性が様式やスタイルに埋没してしまっているというところがないでもないですね(トリオのヴァイオリン・ソロが目立つくらい)。第4楽章もリズム的な「不意打ち」がいろいろなところに仕掛けられている急速楽章(プレスト)で、そもそもテーマがかなり角張ったリズムがあり、動的で非常に推進力があるこの楽章の小気味よいアクセントになっています(太鼓でなく弦でやっているところがミソ)。ある意味でベートーベンの交響曲第3番「英雄」の第1楽章のダイナミックさを予見しているようなところもあります。

 という訳でこの35番、冒頭にも書いたとおり非常に格調高く、ムード的というより音楽主義なところが強く感じられ、いかにも「きちんと書きました」的な情報量の多さが感じられ、聴き応えがある音楽になっています。さて、恒例のニックネームですが、第2楽章が弦楽のみだったところから「弦楽アンダンテ」というのも考えましたが、やはり、この曲では2,4楽章であらわれるちょっと鋭いリズムの効果が印象的であり。それにちなんで「不意打ち」としました。この手のことはこれまで何度も書きましたけれど、今聴いてもそれほど驚くようなものではないですが(っていうがのんびり聴こえるくらいですけど)、当時はこの「不意打ち」、たいそう刺激的に響いたんでしょうね。
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