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音楽全般について 素人臭い能書きを垂れてます
プログレに特化した別館とツイートの転載もはじました

ベルク ヴァイオリン協奏曲/シゲティ,ミトロプーロス&NBCSO

2009年12月03日 23時00分08秒 | マーラー+新ウィーン
 こちらは、ぐっと遡って1945年収録にされた往年の名演奏である。ヨゼフ・シゲティにディミトリス・ミトロプーロスという過度なロマン性を配した原典主義、新古典派主義的の巨匠たちの組合わせである。1945年といえば、原曲が作られてから10年やそこいらの時期であり、同曲はほとんど完全な現代音楽だったはずだから、さぞやキリキリと締め上げたストイックで即物的な演奏か....と、びくびくしながら聴いたところ、意外や意外、-ことヴァイオリンに関していえば-同曲のロマン派的な側面にスポットを当てたような演奏であった。これに比べれば、昨夜聴いた、シェリングの謹厳実直な演奏の方が、よほど即物的でゲンダイオンガク的な感じがしたほどだ。

 もちろん、シゲティのヴァイオリンはグリミョオーのような甘美さ、流麗さはなく、どちらかといわずとも、なにやら角張っていて、ゴツゴツとした、いかめしい風情が漂う演奏なのだけれど、無骨な中にも非常な緊張感と、マジャール的といったらいいのか、とにかく白か黒か的な熱気があって、それがこの作品に潜むドラマを実にホットに伝えているように思うのだ。第2楽章冒頭のソロなど、超絶テクニックというような運動性とはひと味違う、一種の独特の凄みが感じられる。対するミトロプーロスの指揮は、非常に客観的でクールな印象だ。一昨日聴いたマルケヴィチなんかに共通する、この曲のモダンなオーケストレーションを白日の下に晒したような、非常にドライな感触を持った演奏になっている。この曲にロマン派的なドラマを見いだしたのがシゲティだとすれば、ミトロプーロスのはある意味、この曲の現代性を見据えた演奏ということもできると思う。ちなみにオーケストラはトスカニーニにハウス・オーケストラだったNBC交響楽団で、スーパーテクニック軍団だけあって、まったく危なげない演奏だ。ついでに音質があまりよくないので、よくわからないが、かなりブリリアントなサウンドであったことを伺わせるに十分な演奏でもある。

 ちなみに本演奏の収録は前述のとおり1945年だから、当然SP時代の録音となるが、その割にはかなり良好な音質だ。ディスクから起こした音源だから、ダイミックレンジは時代相応、スクラッチ・ノイズも盛大に聴こえてくるが、リマスタリングに際して、ノイズリダクションや音圧調整が成功したのか、ヴァイオリンの表情といい、オケの量感、ディテールがけっこうよく聴きとれる(デッカを思わせるふっくらとした音質ともいえる)。新ウィーン楽派のような音楽は、ディテールが聴きとれなかったり、マスの響きが貧弱だったりすると、とたんにつまらない音楽になったりするけれど、このクウォリティであれば、とにもかくにも最後まで聴きとおせる音質になっている。
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WYNTON MARSALIS / Crescent City Christmas Card

2009年12月03日 00時44分24秒 | JAZZ
 師走に入って、街の風景もそろそろクリスマス気分になってきたところで....、いや、不況下の昨今、巷はかつてほどクリスマスだかといって華やいだムードにもなっていないのかもしれないけれど、今年も例によって25日まで、何枚かのクリスマス・アルバムをレビュウしてみたい(何枚できるかな?)。まず今年最初の一枚はウィントン・マルサリスのクリスマス・アルバムだ。ラックを探してみたら、こんなのが出てきました....などというつもりはない(笑)。ここ何日かにわかにマルサリスを聴き返しているところであり、彼のディスコグラフィをあれこれ調べているうちに、こんなアルバムを出していることを発見したので、早速ポチっとしたものが、先ほど届いたという訳だ。

 さて、このアルバムだが製作は1989年、キャスリーン・バトルとか入っているとの情報もあったから、ひょっとすると彼のクラシック系の作品に収まるべき作品とも予想していたのだけれど、内容的にはほぼジャズ的な音楽といってもいいようなものである。ただし、1989年といえば、マルサリスがブルースだの、ディキシーだのの、「自分のルーツ探しシリーズ」をどっぷり漬かっていた時期でもあり、それを反映してか、このアルバムも内容的にはこうした古風なオールド・ジャズをベースにしたスタイルでもって、クリスマス・ミュージックをマルサリス流に料理してみた....という趣の作品になっている。とはいえ、いくらここ何日か集中的にマルサリスを聴いているといっても、私は基本的にこういうオールドスタイルのジャズは得意でないので、このアルバム、今まさに聴いているところだけど、正直にいうとあんまり楽しめているとはいえない。

 1曲目は私の好きな「Carol of the Bells」だが、クラリネットを中心としたディキシー風のアンサンブルによるイントロからして私にはダメである。モダンな4ビートを使ってアレンジした作品もないわけではなく、モダン・ジャズ風にアレンジした「Let It Snow! Let It Snow! Let It Snow!」「Winter Wonderland」は悪くない出来だし、キャスリーン・バトルがゴスペル風に歌う「Silent Night」、マーカス・ロバーツによるピアノ・ソロ(私の購入したアルバムにはなぜかクレジットがないので、実は誰が弾いているのか不明だが)「O Come All Ye Faithful」や、これをイントロに始まるラストの「 'Twas the Night Before Christmas」はマルサリスのMCをまじえた、ブルージーな「クリスマス走馬燈」的作品で、こういう作品はけっこう楽しかったりしたから、この手の曲がもう少し多かったら....と、個人的には惜しまれるところである。
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