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ハイドン交響曲第35番「不意打ち」/フィッシャー&オーストリア・ハンガリー・ハイドンPO

2009年12月05日 11時16分42秒 | ハイドン
35番は全体に格調高い雰囲気を持っています。作曲の時期としては、34番からけっこう後、既にシュトルム・ウント・ドランクの頃とのことですから、明らかにBGM(というか機会音楽というべきですかね)を想定したような33,34番あたりに比べ、こちらはもう少し座って観賞する音楽みたいな多少スクウェアな雰囲気があります。第1楽章はしずしずと始まるものの、やがて力強いテーマに発展、そのピークでエレガントな第二主題が歌うように登場する段取りは、まるでモーツァルトのピアノ協奏曲の主題提示を思わせるようなところがあり、いつピアノが登場してきてもおかしくないような感じ。展開部で短調に転じてドラマチックになるあたりは「シュトルム・ウント・ドランク」的な特徴といってもいいようなところなんでしょうかね。

 第2楽章は弦楽のみで演奏されるアンダンテ。 これもエレガントな雰囲気がある楽章になっていますが、ちょっと不意打ちっぽくリズミカルなモチーフが随所に挿入されているところや、変ホ長調とのことなのに、どことなく短調のような雰囲気があるのが印象に残ります。第3楽章はいつも通りなハイドンのメヌエットという感じ、良くいうと安心して聴いていられるという感じで、悪く云えば曲の個性が様式やスタイルに埋没してしまっているというところがないでもないですね(トリオのヴァイオリン・ソロが目立つくらい)。第4楽章もリズム的な「不意打ち」がいろいろなところに仕掛けられている急速楽章(プレスト)で、そもそもテーマがかなり角張ったリズムがあり、動的で非常に推進力があるこの楽章の小気味よいアクセントになっています(太鼓でなく弦でやっているところがミソ)。ある意味でベートーベンの交響曲第3番「英雄」の第1楽章のダイナミックさを予見しているようなところもあります。

 という訳でこの35番、冒頭にも書いたとおり非常に格調高く、ムード的というより音楽主義なところが強く感じられ、いかにも「きちんと書きました」的な情報量の多さが感じられ、聴き応えがある音楽になっています。さて、恒例のニックネームですが、第2楽章が弦楽のみだったところから「弦楽アンダンテ」というのも考えましたが、やはり、この曲では2,4楽章であらわれるちょっと鋭いリズムの効果が印象的であり。それにちなんで「不意打ち」としました。この手のことはこれまで何度も書きましたけれど、今聴いてもそれほど驚くようなものではないですが(っていうがのんびり聴こえるくらいですけど)、当時はこの「不意打ち」、たいそう刺激的に響いたんでしょうね。

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