透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

抽象か具象か

2021-05-08 | A あれこれ

 

 建築設計という行為は極めて曖昧で抽象的なイメージを次第に具体的な物へと落とし込んでいく一連の作業、ということができるだろう。どこまで具体的な物に落とし込むか、ということに関しては設計者によって随分異なる。

左は金沢21世紀美術館。SANNA(妹島和世さんと西沢立衛さん)設計。この美術館はサイズの異なる白い箱(ホワイトキューブと表現したりもするが)をいくつも並べ、それらをガラスの円柱で束ねるという構成が抽象的な外観を創っていて、それが特徴になっている。

白い箱が展示空間になっているが、そのうちのひとつは写真のように屋根というか天井が正方形に切り取られた静かな冥想空間。見学した時は真っ青な空をジェット機が通過していった。まるで映像アートを観るようだった。

この白くペンキされた部分の材料がなんであるのかは分からない。この美術館は形といい材料といい抽象的で、具象化へのプロセスのかなり手前で止められている。

それに対して内藤廣さん設計の安曇野ちひろ美術館に使われている形や材料は具体的だ。右の写真を見れば材料が木であることは容易に分かるし、木肌によって具体的にはカラマツであることも分かるだろう。外観だって倉庫のようで具体的だ。

抽象から具象へのプロセスのどこで建築化するか・・・。この頃の建築はますます両極化する傾向にあるように思う。

具象がいいな、とずっと思っていたが知的な抽象も悪くないな、と「金沢」を見学したときは思った。


初稿 2009.04.23  加筆再掲

 


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