透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「寝室の木材量が多いと不眠症の疑いが少ない」

2021-03-26 | A あれこれ

 日本木材総合情報センター発行の「木材情報 2021年3月号」に「寝室の木材量が多いと不眠症の疑いが少ない」という研究成果の報告記事が掲載されている(*1)。

記事によると木質材料が良い睡眠に寄与するという科学的根拠(最近エビデンスという言葉をよく耳にするが、科学的根拠という言葉があるのになぜ使わないのか、理解に苦しむ。明治初期に福沢諭吉らが苦労して西洋語を日本語に置き換えたことが、この国のその後の諸々の研究に大きな成果をもたらすことになったのに。自国の言葉でものを考えることができるというのは実にありがたいことなのに)は世界的にも少ないとのこと。

それだけ実証することが難しいのか、そもそも研究が少ないのか、おそらく両方だろう。医学系と木材関係を扱う農学系の境界領域の研究であることも無関係ではないだろう。

不眠症は様々な要因と関係するために、純粋に木質材料の使用量と睡眠、両者の関係を示すことは難しい。外部の騒音、住宅の形態、住宅の構造(W造、S造、RC造)、広さなど寝室の環境要因と年齢、心身の健康状態、運動や飲酒習慣など個人の特性などが大いに関係するからだ。このようなことを私たちは経験的に知っている。寝室の環境要因として記事には示されていないが、寝室の照明の質(光の色)と明るさも大いに関係するだろう。このことに関してはしばらく前に照明器具メーカーのレポートを読んだ。

2016年から2017年にかけて4事業所の671名を対象に実施された調査ではこのような要因を考慮しても「寝室の木材量が多いと不眠症の疑いが少ない」という有意な結果が得られたという(*2)。記事に示されている図には寝室の木材使用量が「沢山使われている」「やや使われている」「使われていない」という3段階に対応して不眠症の疑いの割合が増えていることが棒グラフで示されている。

記事の「今後の展望」には**キッチンの内装材は汚れにくい素材の使用が常識となっているように、将来、「寝室の家具や内装は木質系材料が常識」の社会を目指している。(中略)社会的な認識を広めていくことも重要である。**とある。



私が床について、ものの数分で眠りに落ちることには部屋の壁の板張り効果もあるのかな。


*1 森田 えみ(森林研究・整備機構森林総合研究所 主任研究員/筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 准教授)
*2 ロジスティック回帰分析 

記事に**研究内容の広報・普及活動も行った。**とあるので、拙ブログで取り上げても支障ないだろうと判断した。