**同人誌、PR誌に書かれて以来、書籍に収録されないままとなっていた知られざる名ショートショート。(中略)入手困難な作品や書籍、文庫未収録の作品を集めた、ショートショートの神様のすべてが分かる、幻の作品集。**(カバー裏面の紹介文より)
星新一ファンなら、手元に置きたい1冊だろう。
収録されている「オリンピック二〇六四」という作品を読んだ。1964年の9月1日に朝日新聞に掲載された作品だ。この年の10月に東京オリンピックが開催された。
競技場の構造に関する記述がある。
**スタジアムの形は百年前のとあまりちがわない。この種の建物にはギリシャ・ローマ時代の円形劇場以来、根本的な変化はみられない。もっとも、上部をドーム状の透明な屋根がおおっている。人工晴天の作れる時代だから、これは雨への対策ではない。内部を適温適湿に保ち、また追風、むかい風の問題をおこさないためだ。**(260頁)
日本初の屋根付き球場・東京ドームの開場が1988年の3月だから、その20年以上も前に星新一は大型のドーム屋根を構想していたことになる。当時建築界にそんなアイディアがあったのかどうか。
**なお、スタジアムは強力プラスチックを材質とし、組立式となっている。閉会になると分解し、次回の開催地へ送られるのだ。**(260頁)
このアイデアもスゴイ。2020年の東京オリンピックの新国立競技場の建設について異論、反論が多々あるように、一過性のお祭り(などと書けば問題があるかもしれないが)のための施設に厖大な建設費をかけ続けていいのかという疑問もあるし、地球資源の「浪費」を防ぐという観点からもこのアイディアはやがて実現するのではないか。競技場のすべてのパーツというわけにはいかないかもしれないが。
このような協力ができる国際社会になることを願う。でないと地球はつぎはぎプラネットになってしまう・・・。