透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

南木佳士「ダイヤモンドダスト」再読

2014-09-18 | A 読書日記



■ 南木佳士が『ダイヤモンドダスト』で芥川賞を受賞したのは1989(平成元)年のことだったと確認。そんなに前のことなのか・・・。その何年か後に文春文庫で読んでいる。『からだのままに』に続き、この『ダイヤモンドダスト』を再読した。

主人公の和夫は町立病院に勤める看護士(男女共看護師と表記されるようになったが、小説が発表された時はまだ男性の場合、看護士と表記していた)。 小学四年生のとき母親を肝炎で亡くす。結婚した相手は足首を骨折して入院していた女性、俊子。子どもが四歳のとき、和夫は妻を転移性の肺腫瘍で亡くす。そして物語のラストで父親を亡くす・・・。

母親の最期を看取った医者が小学生の和夫の肩に手を置いて言う。**「人間てのはなあ、いつかは死ぬんだぞ。そのいつかってのはなあ、こんなふうに、風が吹くみたいに、ふいにやって来るもんだんだな。普通のことなんだぞ。珍しいことでも、怖いことでも、なんでもねえんだぞ」**(153頁) 

作者が医者として患者の死と向き合うことで得た死生観が淡々と綴られている。

読後の静かな余韻に浸る・・・。