①
林丈二「鏝絵は鏝絵だけど、あの名前を何て言うんだろう。無ければ決めたいんですよね。ああいうところについているあれの名前を」
藤森照信「あれ、名前が無いんですよ」
赤瀬川原平「ないの?鏝絵と言ったらもっと一般的な」
藤森照信「うん。一般的には鏝絵。あそこの丸いところの名前を今つけたら、それが日本の建築の中で公用語になっていくね」
昨年、2010年の4月3日に茅野市民館で行われた座談会ではこのように語られているが(「藤森建築展のカタログ」に収録されている)、あれには名前があった・・・。
川島宙次さんは『民家のデザイン』相模書房であれを「妻飾り」としていたので、私もそう書いてきたが、長野県では「丑鼻(うしはな)」という名前があることを最近知った(*1)。
長野県地方の左官用語 土蔵の地梁(牛梁 写真③)は壁面から少し外に出ている。この梁端をいう(写真②)。左官は壁土で塗り込め、ここに家紋や屋号のほか、火除けのまじないとして水、龍などの鏝絵をつける。「丑鼻」についてはこのように彰国社の建築大辞典にもちゃんと出ている。
日本建築の部位にはきちんと名前がついているから、あれには名前が無いという藤森さんの発言には ?だったが、これですっきりした。
②梁端
③丑(牛)梁 桁行方向に掛っている梁
*1 第5回松本安曇野住宅建築展