快読日記

日々の読書記録

2023年の快読!

2023年12月30日 | 今年のベスト
2023年(2022年12月26日~2023年12月30日)の快読

フィクション

「真珠とダイヤモンド 上下」桐野夏生/毎日新聞出版
20代にバブル期を生きた3人の話。
望月・佳那のふたりはともかく、水矢子に対して作者が与えた運命があまりにも残酷。
バブルで自分を見失って破滅した彼らが最後に言う「大人にやられた」というセリフが印象深い。
彼らみたいな若い人たちをいけにえに私腹を肥やして逃げ切り、口を拭っている「大人」の存在をあぶりだすのが桐野夏生の凄さだと痛感しました。
70代に入ってなお、こんな作品が書けちゃう桐野夏生の胆力に圧倒されます。傑作。

「終わりなき夜に生まれつく」アガサ・クリスティ/ハヤカワ文庫
その前に読んだ「ポケットにライ麦を」よりおもしろいなんてことはあるまいと、手を付けずにいた自分は甘かったです。
人間に対する洞察力の高さとするどさ。
クリスティ本人もベストと言い切る作品だそうで、納得。
読みながらずーっと小さい違和感があって、何度もとげとげする感覚があって、
それがラストで一気に解決しちゃう爽快さといったらないです。
この話、「マイク」という男性の一人称告白体で書かれているけど、
他の人物で同じ話を語ってもそんなに大した話ではない気がします。
ストーリーがまずあって、これ「マイク」目線で行ってみるか!みたいなかんじだったのかな。
とにかく満足。小説を読む快楽ってこういうことだと思いました。

「水車小屋のネネ」津村記久子/毎日新聞出版
血縁とか恋愛関係とかではなく、がっちり手をつないだり、しがみついたりするのでもなく、
他人同士がちょっとずつ思いやって、ちょっとずつ支えあって生きる話。
人の小さな善意や思いやりみたいなもので人は育っていく。
というか、そうだったらいい。
この話では彼らをつないでいるのが「ネネ」というヨウムで、
人間の世話と話し相手を必要としている、というのがとってもうれしいです。
1981年、91年、2011年、そしてコロナ禍の2021年、と10年ごとの定点観測になっていて、
その時点の話を描きつつ、語られていない部分もしっかり伝わるのもいい。

あと、ここにでてくる姉妹の母親とその交際相手のような人、「発するコトバ=心」じゃない人。
保身や逃げのためだけに心にもない言葉を平気で発する人。
汚れた言葉を使う人、いや、言葉を汚す人。
これは津村記久子の作品に実はよく登場するタイプの人で、世の中はそういう人との闘い、みたいな側面もあるなあと感じました。

「我が友、スミス」石田夏穂/集英社
昔からボディビルダーに興味があって(ボディビルに、ではなくて)、
それで手にした増田晶文「果てなき渇望」が本当に面白かったので、
図書館で見た「我が友、スミス」がボディビルの話と知って即借りました。
まじめで自分との約束が守れる人がだけが結果を残せる競技、ボディビル。
女性のボディビルダーの中には、自分が女(の体を持つもの)であることへの葛藤を抱えている人も多く、
この作品でも主人公U野には、今の自分ではない、別の生き物になりたいという欲求があります。
でも、「果てなき渇望」にもあったように、女性のボディビルダーには「女性らしさ」が要求されるという不条理。
そこにU野が抵抗するラストもよかったですが、その行為に対するE藤のセリフで、かつてのO島もそうだったとわかる、という終わり方に、かすかな明るさが見えてよかったです。
今年は、この作品のおかげで石田夏穂にハマり、
「ケチる貴方」「黄金比の縁」「我が手の太陽」と続けて読んだ10月でした。
なんか、この世の中って息が詰まるなあ、という感じと、そこになんとか風穴を開けようともがく姿に共感します。

「冷い夏、熱い夏」吉村昭/新潮文庫
人間、生まれてくるのも大変だけど、死ぬのはほんっとに大変な仕事だ、と思いました。
津村節子「紅梅」で吉村昭の最期を読んだ後だったので、それを思い出しながらぐるぐる考え込んでしまった。

「名探偵モンク モンクと警官ストライキ」リー・ゴールドバーグ/ソフトバンク文庫
モンクをはじめ、世間から排除されやすい人たちが事件を解決するアベンジャーズ。
モンクの臨時部下4人は、強迫神経症、認知症、妄想狂、そして凶暴な人。
それぞれのアシスタントも含めて、いわゆる「変な人」の描き方がとてもいい。
優しい、とか、あたたかい、ではなく、同等というか、こういう描き方こそ真のバリアフリーだと感じました。
モンクって、「推理」をしているわけではなくて、無秩序な状態を心底嫌い、秩序を取り戻そうとしているだけ=犯人をみつけること なのがすごい!
謎解き、という点では「名探偵モンク モンク消防署に行く」と比べてゆるい気がするなあと思いながら読んでいたら、
ラストで知らされる犯人の動機に「おおっ!」と声が出ました。ゆるくなかったです。

「ハンチバック」市川沙央/文藝春秋
読書バリアフリーの話を取り上げる評者が多いけど、
実際読んでみると、それよりなにより、あのラストがしんどいです。
いいとか悪いとかではなく、作者にとってこれしかなかった、という選択なわけだから、
その心の中を精一杯想像すると深くて暗い所に落ちていきそうになる。
市川沙央って、今後も作品を書くのかな。
書くとしたら、何を書くんだろう。
必ず読むと思う。

「我が手の太陽」石田夏穂/講談社
溶接工の話。
腕のいい溶接工の「仕事」がじわじわズレて狂っていくかんじ。
志賀直哉「剃刀」みたいな話だと思いました。

「セカンドチャンス」篠田節子/講談社
今年は篠田節子はこれと「冬の光」しか読まなかった。
どっしりしていて信頼できる作家だ。ハズレなし!

「じゃむパンの日」赤染晶子/パームブックス
今年のニュースといえば、赤染晶子の新刊が読めた!ということ。
2月、ちょうど体調が思わしくなくてつらいとき、助けられました。
おもしろくておもしろくて、なくならないようにちびちび読んで、1か月後に再読しました。


ノンフィクション

「虐殺のスイッチ」森達也/ちくま文庫
戦争に関する映像や本に触れるたび「人間ってこんなにも残酷になれるのか」と愕然としてしまうことがあるけど、
そして「自分も状況によってはそうなっちゃうの?」などと思うけど、
森達也のこの言葉、腑に落ちました。目が覚めた。

「こうして人は歯車になる」
「日本人は組織と相性がよい。言い換えれば個が弱い。だから組織になじみやすい。周囲と強調することが得意だ。悪く言えば機械の部品になりやすい。だからこそ組織の命令に従うことに対し、個による摩擦が働かない」


だから、例えば戦場で地獄を味わって復員しても、意外なほどするっと日常に戻る。
人間はすんなり良いことも悪いこともする。
ドイツでも、多くの収容所でゾンダーコマンドと呼ばれる多くのユダヤ人がユダヤ人虐殺に加担していたそうです。

最後にもうひとつ引用。

「社会は加害者の声を聞きたがらない」

「貴の乱」宝島編集部
日馬富士の暴行事件をきっかけに揉めに揉めた相撲協会。
ものすごく生々しくて本当に面白くて一気読みしました。
アウトレイジみたいです。
小林慶彦という正体不明のならずものがにょろりと一匹紛れ込んだだけで、すごい勢力争いに発展します。
っていうか、これはもう抗争。
そういえば、北の富士が解説席で伊勢ヶ濱親方を「頭がいい」と評したことがあったけど、そういう意味だったのか~とうなりました。
男だけの世界って、俯瞰で見るとバカみたいです。

「「自傷的自己愛」の精神分析」斎藤環/角川新書
読んでる間、なるほど~しか言わなかった。
筆者の言う「健康な自己愛」がばっちり自分に当てはまる!!←おめでたい。
昨今の「拡大自殺」系の事件、これでほぼ読み解ける気がしました。

「女ことばってなんなのかしら?」平野卿子/河出新書
日本語って、思った以上に性別に縛られている、ということを思い知らされます。
例えば、少年/少女 という表現の不均等さ。(少男、とは言いません)
おお!言われてみれば!の連続でハッとします。

本当に、女ことばってなんなのかしら?

「自殺帳」春日武彦/晶文社
最近の春日武彦の本で一番おもしろかった。
この人の魅力は、限りなく正直に近い(完全に正直、だと社会的にいろいろ不都合がありそうなので)ことだと思いました。

「随筆集 あなたのくらしを教えてください」シリーズ(全4冊)
心身が疲れたと感じるときにじんわり効く本。

「薬物依存症の日々」清原和博/文春文庫
2016年2月2日の逮捕時のエピソードから始まるこの本を、ちょうど、次男が所属する慶応高校が甲子園で優勝した日に読んだ偶然。
清原って、野球と切り離されちゃったら生きていけない、野球以外のものを持たずに生まれてきた人なので、
息子たちはそのために生まれてきたのかも、と思ってしまいました。
元妻もえらいです。

「「助けて」が言えない」/日本評論社
松本俊彦(清原の主治医)の文章が読みたくて手にした本。
各分野の専門家の文章が収められています。
薬物依存の話以外では、男性の性被害者の話があまりに深刻でした。
知らなかったことがたくさんありました。
生涯で一度でも性被害にあう男女比は10:15、男性の比率が想像以上に多いです。
恥ずかしい、怖い、自分が汚された気がする、言っても信じてもらえないなど、なかなか周囲に相談もしづらい。
自分は男なんだから、強くあらねば、という呪縛からなかなか逃れられない。
男に生まれても、女に生まれても、どっちが当たりとかハズレとかなさそうです。
なかよく生きていきたいです。

「病と障害と傍らにあった本」里山社
病気の当事者、介護者など12人の本にまつわるエッセイ集。
とくに森まゆみ・丸山正樹・川口有美子の文章が記憶に残りました。

「日本一長く服役した男」杉本宙矢・木村隆太/イーストプレス
無期囚の多くは平均20年くらいで仮釈放になる、というのは昔の話。
今は30年くらいなんだそうです。
終身刑導入の動きはあったけど挫折。
終身刑というのは囚人にとってはもちろん刑務官への負担も大きくて、困難を極めます。
そこで制度は変わらず、厳罰化を!という雰囲気だけが残ってしまいました。
さらに、無期囚釈放の高いハードルとして「受け入れ先」の問題があり、
身元を引き受けてくれる個人や施設がないと、このケースのように強盗殺人で61年服役、なんてことが起きてしまいます。
若く未熟な(といっていいと思う)記者が迷ったままのラストには誠実さを感じました。
命・時間・法律など社会制度の歴史、という大きな獲物と格闘した記録。

ほかにおもしろかったノンフィクション(読んだ順)
「心の野球」桑田真澄

「私の文学史」町田康

「ミライの源氏物語」山崎ナオコーラ

「ポワロと私」デビッド・スーシェ
 途中、スーシェの自伝なのか、ポワロの自伝なのかわからなくなります。
 いろんな俳優がポワロをやったけど、結局スーシェのポワロが最高な理由がよくわかる本。

「ラッセンとは何だったのか」
 アートな人たちのラッセンに対する憎しみがあふれた本。
 ピカソより~ フツーに~ ラッセンがすっき~!
 「普通に好き」と言われたい/言われたくないアート人たちのイラつきが手に取るようにわかり、結果、ラッセンに感心してしまいました。

「明るい原田病日記」森まゆみ

「やくざ映画入門」春日太一
 これを読んで「県警対組織暴力」を見ました。
 すっっごくおもしろかったよー!!

「聞いてチョウダイ根アカ人生」財津一郎
 「座頭市」での演技に感動し、亡くなるちょっと前に読んだ本。
 明るくて、正々堂々としていて、困難を乗り切る力があって、イメージ通り。すてきだ。

「コロナに翻弄された家」末利光
 姉と2人の妹が新型コロナに感染し、2020年の4月、妹2人が亡くなった、元NHKアナウンサーの手記。
 人生とは、とか、運命とは、とかに話が行かず、終始一貫して政治や医療システムに怒りが向けられている。
 つまり、コロナ禍とは「人災」である、と再認識しました。

「ヒロコとニャンコと音楽の魔法」谷山浩子
 谷山浩子ファンのバイブル「魔法使いの浩子さん」のアンサーソング(ブック?)みたいな、副読本みたいな本。

「ありがとうだよ、スミちゃん」萩本欽一
 プライベートを語っている珍しい本。

「人生はそれでも続く」読売新聞社会部「あれから」取材班

「NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実」NHKスペシャル取材班
 ひきこもりが社会問題とされはじめたころ、
 そうは言っても親が死んで収入がなくなれば働かざるを得ないよねえ、なんて甘く考えていたけど、
 彼らが50代以上になってきた今、衰弱死をしているという衝撃。

「水谷豊自伝」

            

あいかわらずの無節操な読書ですが、
来年もいい本にたくさん巡り合えますように。

2022年の快読!

2022年12月27日 | 今年のベスト
2022年(1月1日~12月25日)の快読!

フィクション

「ポケットにライ麦を」アガサ・クリスティ/ハヤカワ文庫
今まで読んだクリスティ作品の中で1番!
犯人を当てようとして読むとき、我々は無意識に「作者が嫌いなタイプの人間はだれか」を考える。
この犯人は一見それに当てはまらないようだが、最後にこういう人間を芯からの悪人と定めているクリスティに共感した。
読者にとって合う作家とは、人間の好みが合う作家なのだ。
ミス・マープルが、グラディスというちょっと知的レベル低めの少女を「愚か」と断罪しているようにみえて、
実はそこに不憫さや悲しさを感じているところも傑作。50歳を過ぎてこれを読めた運のよさ。

「とんこつQ&A」今村夏子/講談社
短編集。特に「嘘の道」が傑作だと思う。
今村夏子って、実は人間に対して強い嫌悪感を持っている気がする。
人間はおろかでどうしようもなくグロい。そこに“希望”みたいなものも一切持っていないようにみえる。
おっとりしたボケ風味がおもしろいせいで見えづらいけど、中心の核のところに“絶望”が食い込んでいて、それはかなり硬くて黒い。
「良夫婦」もすごい。傑作すぎて怖い。ずっとボケてて、だれも(作者も)この世界に突っ込まなくて、そしてものすごく不安定。
4編すべて3回ずつ読みました。

「燕は戻ってこない」桐野夏生/集英社
人間の多層性。中心部は小心で臆病で少し生真面目なリキ。
外側から見ると浅はかでこらえ性がなく熟考できないタイプ。
さらにこれを他人から見ると、物静か、だったり“キレイ”に見えたりする。
そういうことが丁寧に描かれている。
そのほかの人物も、例えばリキの母親や同級生のような、つまらないからこそリアルな人物から、
りりこのようなトリックスターまで幅広い。何がすごいって、それぞれの人物が使う“言葉”が全然違う、その正確な書き分けがすごい。
最初からほとんど外圧によって動いてきたリキが、最後の最後に100%自分の意志で決断する場面があり、
その底知れなさみたいなのが不気味でズンッときた。

「失われた岬」篠田節子/角川書店
「砂に埋もれる犬」桐野夏生/角川書店
「団地のふたり」藤野千夜/U-NEXT
「現代生活独習ノート」津村記久子/講談社
「花火」吉村昭/中公文庫
「ソーネチカ」リュドミラ・ウリツカヤ/新潮社
「なぜ「星図」が開いていたか」松本清張/新潮文庫



ノンフィクション

「嫌われた監督」鈴木忠平/文藝春秋
プロ野球についての知識は全然ないけど、落合博満のことはずーっと気になっている。
半分は福嗣くんのお父さんとして、だけど。
あとの半分は、この人の思慮深さと周囲の理解を求めていないようにみえること。
去年、落合の映画評論集「戦士の休息」を読んでとってもおもしろかった。
深く鋭い洞察力を持つがゆえに孤独にならざるを得ない落合だけど、信子がいるからいいんだよね~。
そういうタイミングでこの本を読んだ。
好き嫌いで選手を見ない、感情ではなく契約で関係を結ぶ、チームのためではなく家族のために野球をしろと選手を諭す。
しがらみや好悪や感情で動く群れからしたら全然面白くないから、上層部には嫌われるが、
選手一人ひとりと誠実に(ちょっと不器用なくらい誠実に)関わり、彼らの内面を変えていった結果、チームは快進撃を続ける。
川崎に死に場所を与える場面では、久しぶりに泣きながらページをめくった。
最終的には結果を出しすぎて年俸が上がり(もともとそういう契約だった)、そのせいで財政が圧迫されて解任、という結末。
でも、任期の最後の方で、落合のものの考え方がチームにしっかり染み込んでいたところにうなった。
世の中がみんな落合的価値観で動いたらどんなに楽だろうと思った。
星野仙一的な、群れが幅を利かす社会はしんどい。徒党を組むのはきつい。
好き嫌いで物事が決まっていくのもつらい。
好きって言ってくる人は、何かの拍子に大嫌いにも針がふれるので恐ろしい。

「忠臣蔵入門」春日太一/角川新書
史実としての赤穂事件ではなく、長い間日本人に愛されてきたコンテンツとしての「忠臣蔵」をがっちり教えてくれる本。
ちょうど介護生活に入ってBSの時代劇ばかりを見ていて、忠臣蔵もドラマや映画、三波春夫の歌謡浪曲など、何度も見る中で、そのストーリーや名場面、キャラクターなどだいぶ詳しくなったところだったのでグッドタイミング。
ちなみにわたしが忠臣蔵に出るとしたら天野屋利兵衛がいいな~。
何度見ても、だれのを見ても、本当にうまくできた話で、知れば知るほどおもしろい。
そもそも自分は何で「忠臣蔵」を知ったのか、と振り返ると、子供のころに見たドリフのコントなんですねえ。
このいなかざむらいめがぁ!っていう。

「虚空の人 清原和博を巡る旅」鈴木忠平/文藝春秋
「嫌われた監督」のときはまだ日刊スポーツの記者だった鈴木忠平がフリーになって書いたのがこの本、というプロローグから“鈴木忠平を巡る旅”というかんじで期待が高まったが、その期待以上の作品だった。
清原が、自分に生まれたことを後悔する場面がある。
自分に生まれたことを後悔する、これ以上の悲しみがあるだろうか。
出所した清原を支えた弟分の男性が自殺、その後を引き継いだ宮地さんとサカイさんの献身、その2人に清原が甲子園のホームランボールを1つずつ贈るところ、読んでいるこちら側の感情も耐えられないほど揺さぶられる。
1985年のドラフトで桑田は悪役となり、清原は「かわいそうな人」になって、何をやっても許され同情されるようになった。
巨人の内部にどういう動きがあったんだろう。
“人を疑わない男”清原と、“人を信じない男”桑田の対比も壮絶だ。
どちらもたった高3で大人にひどい目にあわされて、それをずっとひきずっている。
特異な才能に大人が群がって奪い合い騙しあう構図は、マイク・タイソンを彷彿とさせる。
清原という人自体はどちらかというと無垢で空洞で、そこが人を引き付ける引力になっていることはまちがいない。
一方の桑田真澄にもすごく興味がわいた。

「清原和博への告白」鈴木忠平/文藝春秋
甲子園で清原にホームランを打たれた投手たち(を中心とした対戦相手)のその後や清原への思いを取材した本。
清原ブームが続いていた私としては、これも読んでおこうくらいの気持ちだったんだけど、これが本当に名著だった。
鈴木忠平って、人の人生を救いとる力(ある種のしつこさとあたたかさと図々しさ)に長けていて、
文章はちょっとどうかというくらいエモーショナルでぐいぐい引き込まれる。
打たれた投手や捕手たち、ひとりを除いてほとんどが甲子園の試合でしか清原と接していない。言葉を交わしたこともない。
しかし、その後の人生の折に触れて彼らは清原のことを考える。これはたぶん一生続く。
清原を「虚空の人」とはよく言ったと思う。だからこその引力。
彼らにとって清原とは何だったのか。
ゆったりしたスイングでホームランを放つ、打たれても痛みを感じないのが清原だと口をそろえて証言するのもおもしろかった。
むしろ桑田の方が斬るような打法で怖いんだって。くーっ!野球のことよくわからないけど、なんだかすごい。

「定本 桑田真澄」スポーツグラフィック・ナンバー/文春文庫
清原に関する本を読むと、その奥にある大きな存在である桑田真澄が気になって仕方ない。
ちょっと落合博満とも共通点がある。
インタビューも若いころのものから大人になってからのもそろっていて、
通して読むことで、桑田真澄の頭の良さと信じる力の強さがよくわかる。
そしてそれは経験によるものというよりも資質的なもので、清原との違いがすごい。

「ドリフターズとその時代」笹山敬輔/文春新書
志村けんが亡くなったことで、ドリフターズにひと区切りついたタイミングで書かれた本。
おおっ!!と思ったところはたくさんあったけど、一番印象に残ったのは志村けんといかりや長介との複雑でデリケートな関係だ。
親子のようなライバルのような戦友のような。
どちらも父親との葛藤を抱え、徹底的に完璧主義者で、反発した時期もあったようだけど、互いが一番の理解者でもあった。
たしかにこの二人は似ている。
加藤茶はもちろん、他のメンバーについてもとってもよく調べられていて大満足。
荒井注が体力的な問題でドリフを脱退した年齢が今の自分とそんなに変わらないことに衝撃を受けた。

「永遠のPL学園」柳川悠二/小学館
PL学園野球部の最後の部員になった62期生の最後の戦い。
結局、廃部になったのは何度も起きた暴力事件と、何より教団の資金力不足・PL教団信者の激減。
三代目に入ってから、いろんな歯車がかみ合わなくなるんだなあ・・・。
よく取材されていて充実した1冊だが、鈴木忠平のドラマティックかつエモーショナルな文章になれたせいか薄味に感じられる。
しきれ!!PL!!

「Wうつ」萩原流行・まゆ美/廣済堂書店
中村吉右衛門版「忠臣蔵」で、天野屋利兵衛を演じた萩原流行(見る前はミスキャストでは?と思ったけど、さっぱりして品がある天野屋利兵衛になっていてすっごくよかった)が不幸な事故で亡くなってだいぶたつが、警察車両との事故であったせいか、その後の経過の詳細がよくわからない。
クセが強くてギラギラと華やかな萩原とその妻の話。
2人とも不安定で危なっかしいけど、お互いにこの人しかいなかった夫婦だ。
萩原がミュージカルで鹿賀丈史の代役を務めたことをきっかけにうつを発症していく過程とその症状、妻へのダメージ、強さともろさの落差がすごい。

「文人悪食」嵐山光三郎/新潮文庫
近代文学のオールスターのエピソードは濃くて(濃すぎて)大満足。
なにより嵐山光三郎のものの見方や考え方が爽快。
でも岡本かの子を悪く言い過ぎ!おもしろいからいいけど。
思い入れがある作家とそうじゃない人との落差はあるけど、そこもまたいい。
“小林秀雄は畏怖されるが親しまれることはない”とか中也の非道っぷりの暴露(あの美少年風肖像写真まで否定していて笑った)もいい。
壇一雄や深沢七郎といった深く関わった人についての文章は特に滋味に溢れている。
続けて嵐山の「NHK人間講座 2000年10月~12月期 追悼もまた文学なり」「文人悪妻」もおもしろかった。

「冷酷」小野一光/幻冬舎アウトロー文庫
座間の白石某の事件の話。解説で森達也もいうように、生まれついての殺人者というのがいるとしたらこの人かも。
断定できないのは、白石の家庭や生育環境についてほとんど調べられていないから。
しかし、それを知りたいと思うのは、そんな人間はいない、成育歴の中で何かあったに違いない、という因果関係を求めて納得したいというこちら側の欲求でしかない。
人を殺し、その死体をどう解体したかという話と、次の面会でハシカンの写真集を差し入れてね、をまったく同じ調子で語る人間は、「冷酷」という言葉では掴みきれない。

〈そのほかおもしろかった本〉
・「鬱屈精神科医、占いにすがる」春日武彦/河出文庫
  ここまで心の中を吐き出したものを読んじゃっていいのか、と何度も思いながら読了。
・「美しい日本のくせ字」井原奈津子/パイインターナショナル
  やっぱり手書きの文字は好きだ。
  南辛坊みたいなセンスある(自覚的な)くせ字と、まったく無自覚な、ド天然のくせ字、どちらも鑑賞に値する。
・「潜入・ゴミ屋敷」笹井恵里子/中公新書
・「8050問題」黒川祥子/集英社文庫



年間100冊読めたらすごいなあ、くらいだったわたしの読書生活でしたが、
どっぷり介護のおかげで読書量は倍増。わはは。いいこともあるんですねえ。
介護って、待機時間が長いんです。ただついているっていう時間。
そんなわけで、一つのテーマをぐいぐい読むという楽しみを得られたよい1年でした。
久しぶりに更新もできてよかったです。
来年もいい本がいっぱい読めますように。

2020年の快読日記

2021年01月03日 | 今年のベスト
1月3日(日)

2020年5月から12月までに読んだ本で特によかったものをまとめてみました。

フィクション

「告白」町田康

「タイガー理髪店心中」小暮夕紀子

「デンジャラス」桐野夏生

4「サキの忘れ物」津村記久子
5「見知らぬ乗客」パトリシア・ハイスミス
6「アンボス・ムンドス」桐野夏生
7「BUTTER」柚木麻子
8「感応連鎖」朝倉かすみ


ノンフィクション

「父・金正日と私 金正男独占告白」五味洋治

「追跡 金正男暗殺」乗京真知

「スピリチュアル系のトリセツ」辛酸なめ子

4「ふたりの山小屋だより」岸田衿子 岸田今日子
5「最後の講義 完全版」福岡伸一
6「怖い凡人」片田珠美

      

2020年は面白い小説にあたった年でした。
いや、もしかしたらキツめのノンフィクションを読む体力が足りなくて、
そういうのを避けていたのかもしれないです。

2021年もいい本にめぐり合えますように



2019年のベスト!

2020年02月11日 | 今年のベスト
ごぶさたしておりました

ブログ再開記念に、休んでいた3年半の読書記録を一気に!!

・・・そんな気力もないんですが

昨年の読書を振り返ってみたいと思いまして。

これはよかったよ~!というのを並べておきます。

 ノンフィクション

  1位 「全身芸人」 田崎健太
  2位 「一億総ツッコミ社会」 マキタスポーツ
  3位 「いつまでも若いと思うなよ」 橋本治

  次点(☆☆順不同)   
   「生命と食」福岡伸一   
   「天才・勝新太郎」春日太一   
   「父権制の崩壊 あるいは指導者はもう来ない」橋本治   
   「つけびの村」高橋ユキ   
   「介護のうしろから「がん」が来た!」篠田節子   
   「思いつきで世界は進む」橋本治   
   「世露死苦現代詩」都築響一  

  次点(☆順不同)  
   「6粒と半分のお米」木皿泉   
   「中野京子特別授業 シンデレラ」中野京子   
   「日本の同時代小説」斎藤美奈子   
   「家族終了」酒井順子   
   「ロックで独立する方法」忌野清志郎   
   「餃子の王将社長射殺事件」一橋文哉   
   「みぎわに立って」田尻久子   
   「清張地獄八景」みうらじゅん    
   「地面師」森功   
   「ハゲの文化史」荒俣宏   
   「連続殺人犯」小野一光   
   「ひみつのしつもん」岸本佐知子   
   「ドアの向こうのカルト」佐藤典雅   
   「くよくよマネジメント」津村記久子   
   「演歌よ今夜もありがとう」都築響一

 フィクション

  1位 「エヴリシング・フロウズ」津村記久子
  2位 「目には見えない何か」パトリシア・ハイスミス
  3位 「羆」吉村昭

  次点(順不同)
   「回転する世界の静止点」パトリシア・ハイスミス
   「鏡の背面」篠田節子
   「11の物語」パトリシア・ハイスミス
   「模倣犯」宮部みゆき
   「むらさきのスカートの女」今村夏子
   「犬はいつも足元にいて」(再読)大森兄弟
   「焼野まで」村田喜代子
   「絶望図書館」頭木弘樹


  

2016年の秋に家族が倒れまして、想定より10年ほど早い介護生活に突入しました。

倒れた当初は、今日明日のうちに死ぬかも、という状態で、
本を読みたいとすら思えなかったんですが、
10日ほどして「こりゃ死なずになんとかなるかも」となったら、
何か読みたい欲求がむくむくと頭をもたげてきました。
でも、これだけ周囲に本があふれていても
字を追って咀嚼して飲み込めるものがなかなかないんですね。
もとの読書生活を取り戻せたきっかけは、淀川長治のエッセイです。
おいしい白米のおかゆみたいに、すーっと甘く入ってきた。
本ってありがたいもんです。

また、ぽちぽちと記録つけていく所存です。
なにとぞよろしくおねがいいたします。 

2015年の快読!!!

2015年12月23日 | 今年のベスト
2015年(1/12~11/9)に読んだ本の中からベストを考えてみました。

  フィクション(順不同)

  「ポースケ」 津村記久子

  「松竹梅」 戌井昭人

  「アクロイド殺し」 アガサ・クリスティー

  「永い言い訳」 西川美和

  「子供時代」 リュドミラ・ウリツカヤ


  ノンフィクション

   「真説・長州力 1951-2015」 田崎健太

   「楳図かずお論 マンガ表現と想像力の恐怖」 高橋明彦

   「騙されてたまるか 調査報道の裏側」 清水潔

   「サザエさんの東京物語」 長谷川洋子

   「検証 ワタミ過労自殺」 中澤誠 皆川剛 / 「ワタミ・渡邉美樹 日本を崩壊させるブラックモンスター 」中村淳彦

   「世界が土曜の夜の夢なら ヤンキーと精神分析」 斎藤環 

   「ネット私刑」 安田浩一

   「名人に香車を引いた男 升田幸三自伝」 升田幸三

   「翻弄者」 藤原章夫

  「看護師という生き方」 宮子あずさ

  「ヘンな日本美術史」 山口晃



年末のひとり選考会のために、今年は最初から3段階の「☆」をつけてみたんですが、こうして振り返ってみると、「時間が経つと感動がうすれるもの」と「時間が経つほど染み込んでくるもの」に分かれるみたいです。

今年は比較的ノンフィクションでおもしろいものが読めた気がします。

読了してもブログが更新できなかったものがあったので、タイトルと☆を記しておきます。

 「新装版 二人の夫を持つ女」 夏樹静子 ☆☆

 「名探偵登場!」 筒井康隆ほか ☆☆

 「花模様が怖い」 片岡義男 ☆☆

 「アガサ・クリスティ完全攻略」 ☆☆

 「サムライ 評伝 三船敏郎」 松田美智子 ☆☆☆

 「おしゃれと無縁に生きる」 村上龍 ☆☆

 「ずるずる、ラーメン」 椎名誠ほか ☆☆

 「バカになったか、日本人」 橋本治 ☆☆☆

 「「動かない」人は病む 生活不活発病とは何か」 大川弥生 ☆☆

 「常識哲学 -最後のメッセージ」 なだいなだ ☆☆☆

 「「怖い絵」で人間を読む」 中野京子 ☆☆

 「看護婦が見つめた人間が病むということ」 宮子あずさ ☆☆☆

 「負けない力」 橋本治 ☆☆☆

 「いつまでも若いと思うなよ」 橋本治 ☆☆☆

 「ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌」 神山典士 ☆☆☆ 


「名探偵登場!」はアンソロジー。
津村記久子のミス・レモンを主人公にした短篇がすごくよかったです。

「花模様が怖い」は短編集。
傑作との誉れが高い作品集で、読み始めは「おお。これは噂にたがわず!!」というかんじでしたが、最後の2編がどうにも受け付けないタイプでだめでした。
相性というか、単に好みの問題ですね。

「サムライ 評伝 三船敏郎」はとにかくおもしろかった。
気遣いが細やかで繊細で、なんでも完璧にこなす姿と、元妻を口汚く罵る姿、そしてその酒乱っぷりのギャップ。
こんなに振り幅の広い人っていますかね。
この本のおかげでわたしは今ちょっとした三船ブームです。
「無法松」は続けて2回見ちゃた。

橋本治の新刊は、還暦も過ぎて病を得、人生のしめくくりを意識して、そこから逆算しながら言葉を吐きだしているような凄味・迫力を感じ、集中して読みました。

「ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌」もおすすめ。
「片や、何でもいいから有名になりたいと野心をむき出しにする男。中身は空虚だが、人を驚かしたりその心を鷲掴みにしたりする才には長けていた。/もう一方は、音楽に関することなら何でも純粋な興味を持つ男。知識も技術も豊富なものを持っているが、唯一自分から何かをやりたい、やろうという意思には欠ける。これをやってくれと頼まれたら、その要求以上の作品に仕上げる才にかけては人後に落ちない。」(171p)
よりによって出会っちゃったもんですね。運が悪い。いや、いい?(佐村河内にとって)
騒がれていた当時は、佐村河内の気持ちはともかく、新垣の行為(ゴーストを引き受けて実行したこと、金を受け取っていたこと、最終的にはそれを世間にばらしたこと)に首をかしげることばかりでしたが、これを読むと「ああ、どうしようもなかったんだな」と思えます。

    

なかなか更新がはかどらないけどしばらくは続けたいので、来年からちょっと形式を変えてみるかもしれません。

引き続きお付き合いいただけたらうれしいです。

良い年越しをお迎えください

2014年の読んだり読まなかったり

2014年12月27日 | 今年のベスト
2014年(1/5~11/16)に読んだ本の中からベストを考えてみました。

  フィクション

 「芝桜(上・下)」   「木瓜の花」 有吉佐和子

 「ペテロの葬列」   宮部みゆき

 「ゆうじょこう」  村田喜代子

 「橋」 橋本治

 「繁栄の昭和」 筒井康隆

 「Amazonで変なもの売ってる」 谷山浩子

 「湿地」 アーナルデュル・インドリダソン

 「しあわせの書 迷探偵ヨギ ガンジーの心霊術」 泡坂妻夫


  ノンフィクション

(順不同)

 「ヤンキー化する日本」 斎藤環

 「誘蛾灯 鳥取連続不審死事件」  青木理

 「無差別殺人の精神分析」  片田珠美

 「家族喰い 尼崎連続変死事件の真相」  小野一光



(順不同)

「ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン」  トゥーラ・カルヤライネン

「走らないのになぜ「ご馳走」? NHK気になることば」   「「サバを読む」の「サバ」の正体」  NHKアナウンス室

「北朝鮮と日本人 金正恩体制とどう向き合うか」  アントニオ猪木 辺真一

「古典を読んでみましょう」  橋本治

「おかしな男 渥美清」  小林信彦

「熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録」  井川意高

(順不同)

「日本のリーダーには、武器を持つ覚悟はあるのか!?」  大川豊 佐藤正久

「モンスター 尼崎連続殺人事件の真実」  一橋文哉

「霊能者として生まれて生きて」  宜保愛子



アクセス解析、たまにGooが無料でやってくれるのを見るだけなんですが
今でも「鶴田浩二」「カーロン愛弓」っていうキーワードで見に来てくださる方が多い。
あとは「安部公房」「山口果林」とか「大森兄弟」あたりですね。
衝撃的だったのは「西村賢太 ひどい」。

そんなふうにぽちぽち読んでくださる方がいるのに、
なかなか更新がはかどりませんでした。
そのうち読了本がたまり、ますます更新が遅れるという・・・。
本読む時間を削って更新、というのも本末転倒な気がするので
もうすこしすっきり短くまとめて、でも「こんな本読んだよ」と素直に伝わるようなブログにしたいと思っています。

ことしもおつきあいいただきありがとうございました

良い年越しをお迎えください

2013年 読んだり読まなかったり

2013年12月16日 | 今年のベスト
2013年に読んだ本の中からベストを考えてみました。

  フィクション

  「仮想儀礼 上」 「仮想儀礼 下」  篠田節子

  「吉田知子選集Ⅰ 脳天壊了」 吉田知子

  「ガタラの豚」  中島らも

 「もうひとりのわたし」 岸田今日子

 「わたしは妊婦」 大森兄弟

 「吉田知子選集Ⅱ 日常的隣人」 吉田知子

 「ロボット小雪」 業田良家

 「冷たい十字路」 (「婚礼、葬礼、その他」所収) 津村記久子

 「八番筋カウンシル」 津村記久子

 「スタッキング可能」 松田青子


  ノンフィクション

  「戸塚ヨットスクールは、いま」  東海テレビ取材班

  「毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記」  北原みのり

  「安部公房とわたし」  山口果林

 「紫式部のメッセージ」 駒尺喜美

 「ネットと愛国 在特会の「闇」を追いかけて」 安田浩一

 「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」 町田智浩

 「もたない男」 中崎タツヤ

 「なんらかの事情」 岸本佐知子

 「飼い喰い 三匹の豚とわたし」 内澤旬子

 「別海から来た女-木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判」 佐野眞一

 「人生を狂わせずに親の「老い」とつき合う」 和田秀樹

 「在中日本人108人の それでも私たちが中国に住む理由」 在中日本人108人プロジェクト編

 「吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集」 吉田豪

 「このマゲがスゴい!! マゲ女的時代劇ベスト100」 ペリー荻野とチョンマゲ愛好会女子部

 「「余命3ヵ月」のウソ」 近藤誠

 「実録 プロレス裁判」 別冊宝島編集部


      

小説は短篇が好きなんですが、
 いい作品から受ける読後の満足感(満腹感)は長編小説にかなわないですね。
 少ない割に面白い小説にあたった年でした。
 吉田知子が選集を出してくれたのがうれしい。
ノンフィクションではやっぱり事件もの。
 テレビやネットでは断片的になってしまうところを、
 総合的かつ多角的に(あるいは主観的に)まとめてくれるものといえば、
 どうしても「本」になる。
 ・・・結局ただの野次馬根性なんですけどね。

      


ことしもおつきあいくださってありがとうござます。

よい年越しをお迎えください。

2012年の読みつ読まれつ

2012年12月28日 | 今年のベスト
2012年に読んだ本の中からベストを考えてみました。

 フィクション

 「罪悪」 「犯罪」 フェルディナント・フォン・シーラッハ

 
 「ソロモンの偽証」 宮部みゆき

 「ゲイルズバーグの春を愛す」 ジャック・フィニイ

 「妄想の森」 岸田今日子 

 「萩尾望都作品集 なのはな」 萩尾望都

 「小川洋子の偏愛短篇箱」 小川洋子(編著)

 「どこ行くの、パパ?」 ジャン=ルイ・フルニエ

 「アレグリアとは仕事はできない」 津村記久子
 

 「夕陽ヵ丘三号館」 有吉佐和子

 「もいちどあなたにあいたいな」 新井素子

 次点
 「俳優・亀岡拓次」 戌井昭人


 ノンフィクション

 「橋本治という立ち止まり方」 橋本治

 「『善人』のやめ方」 ひろさちや

 「果てなき渇望-ボディビルに憑かれた人々」 増田晶文

 「皇族のひとりごと」 三笠宮寛仁

 「こけつまろびつ人生」 玉川スミ

 「漢字と日本人」 高嶋俊男

 「完本・美空ひばり」 竹中労

 「赤めだか」 立川談春

 「柔らかな犀の角 山崎努の読書日記」 山崎努

 「Kitano par Kitano-北野武による「たけし」-」 北野武 ミシェル・テマン

 「ちあきなおみに会いたい。」 石田伸也

 「開運離婚」 泰葉

 「自分の体で実験したい-命がけの科学者列伝」 レスリー・デンディ/メル・ボーリング

 「ベスト・オブ映画欠席裁判」 町山智浩 柳下毅一郎

 「評伝 ナンシー関『心に一人のナンシーを』」 横田増生

 次点
 「イラン人は面白すぎる!」 エマミ・シュン・サラミ
 「サブカル・スーパースター鬱伝」 吉田豪
 「今を生きるしあわせ」 河野義行

     

こたつで一人選考会を開催した。
今年はノンフィクションに当たりが多かった気がします。
闘病記ばかり読んでいた昨年から一変、苦労した人の自伝や評伝をよく読んだ・・・あ、同じか。
そうそう、事件ものが少なかったです。
ドロドロしたものを読むと疲れるようになった。
加齢のせいか。
事件といえばかなえキッチンを追った「毒婦。」(北原みのり)と「別海から来た女」(佐野眞一)、どっちを読もうか迷っているうちに尼崎の事件が発覚したので、今はそれを誰かが書いてくれるの待ち、です。

小説では、シーラッハと津村記久子が収穫でした。
花登筐を1冊も読まなかった。
それから、「吉里吉里人」を読み始めて中巻で挫折。
高3の夏、一緒に受験勉強をしていた○ちゃんという女の子が読んでいて、
「これを読破できたら私は志望校に合格する気がする」って言ってました。
一種の願掛けですね。
先日知り合いの家で「吉里吉里人」全3巻を見かけて、ふと○ちゃんのことを思い出してさっそく貸してもらって。
で、投げ出したんですけど。
(上巻の言語の話は夢中で読めたのに、中巻で軍隊の話になったとたんに脳が受けつけなくなった)
○ちゃんは結局読了したのかなあ。
もう20年以上前の話ってのがおそろしい。

ことしもお付き合いくださってありがとうございました。
よいお年をお迎えください

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2011年の読みつ読まれつ

2011年12月22日 | 今年のベスト

2011年1月1日から2011年12月19日までに読んだ本の中からベストを考えてみました

フィクション

 「癌だましい」 山内令南

  「子連れ狼」 小池一夫 小島剛夕

  「人質の朗読会」 小川洋子

  「夢の中 悪夢の中」 三原順

  「家霊」 岡本かの子

  「ぴんぞろ」 戌井昭人

  「蟻」 ベルナール・ウェルベル
 
  「犬はいつも足元にいて」 大森兄弟

  「船場」 花登筐

  「暗渠の宿」 西村賢太

 
 次点

  「ほとんど記憶のない女」 リディア・デイヴィス

  「I'm sorry, mama.」 桐野夏生

  「骨の記憶」 藤原智美


ノンフィクション

 「寡黙なる巨人」多田富雄

  「多読術」松岡正剛
 
  「身体のいいなり」内澤旬子
 
  「マイ仏教」みうらじゅん
 
  「「大相撲八百長批判」を嗤う 幼稚な正義が伝統を破壊する」玉木正之
  
  「怒るヒント」ひろさちや

  「加害者家族」鈴木伸元 

  「プロレス・格闘技 超“異人”伝」

   「グアテマラの弟」片桐はいり 

 「日本人なら知っておきたい日本文学」蛇蔵&海野凪子

 
 次点

  「死んだら何を書いてもいいわ 母・萩原葉子との百八十六日」萩原朔美

  「戦場から女優へ」サヘル・ローズ



 長かったような短かったような平成23年が終わりますね。
  なぜか、大きな病気を経験した人の本をよく読んだ気がします。
  困難をどう迎えて乗り越えるか、それは本当に人ぞれぞれです。
  「乗り越えない」という方法だってある。

  でも、なんでもかんでもあきらめればいいというもんじゃない。
  怒るべき時にはきっちり怒るべきだ!
  という ひろさちや本のメッセージが今になって胸に響きます。
  
  来年は、どんな年になるのかな。

  そんなかんじで今年の「読みつ 読まれつ」はおしまいです。
  お付き合いいただきありがとうございます。
  よい年越しをお迎えください

今年最後の1票を!


今年の1冊

2010年12月23日 | 今年のベスト
2010年1月1日から2010年12月17日までに読んだ本の中からベストを考えてみました

 フィクション (順不同)
  
      
       「痺れる」 沼田まほかる 

  
       「花野」 村田喜代子 

     
        「変愛小説集」 アリ・スミス 他 岸本佐知子/訳 
   

  <次点(順不同)>

     「ずっとお城で暮らしてる」 シャーリイ・ジャクスン
    
     「ゆれる」 西川美和
    
     「更年期少女」 真梨幸子

     「東京島」 桐野夏生    
      

 ノンフィクション


          「日本インディーズ候補列伝」 大川豊 


          「憚りながら」 後藤忠政 


          「フクシ伝説 うちのとーちゃんは三冠王だぞ!」 落合福嗣 

 
         「中島敦『山月記』の真実」 島内景二


        「力士はなぜ四股を踏むのか?」 工藤隆一


        「頭の中身が漏れ出る日々」 北大路公子
 

        「無限を求めて エッシャー、自作を語る」 M・C・エッシャー


        「意志道拓」 長谷川穂積


        「言葉の煎じ薬」 呉智英


       「お母さんという女」 益田ミリ

   
   <次点(順不同)>

      「身もフタもない日本文学史」 清水義範

      「死刑でいいです」 池谷孝司/編著

      「あなたみたいな明治の女」 群ようこ


年々、冊数は減ってる感じ。
読書は量だけじゃないとわかってはいるけど、もうすこしガツガツ読みたいなあ、来年は。
って言ってても、実行しないんだろうなあ。
「今年は日本の近代小説を読みたい」と友達に吹いたくせに、
結局1冊も読まず終いでした。わはは。

だから、来年はこんな本が読みたいです!などと言わないことにします。

来年もいい本にめぐりあえますように。

ことしの更新はこれでおしまい。

2010年もお付き合いくださってありがとうございました。
よいクリスマス&年越しをお迎えください

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今年の20冊

2009年12月21日 | 今年のベスト
 ~2008年12月29日から2009年12月18日までに読んだ本の中からベストを考えてみた

 フィクション

1  巡礼 橋本治

2  誠実な詐欺師  トーベ・ヤンソン

3  人が見たら蛙に化(な)れ  村田喜代子

4  私、という名の人生  原田宗典

5  ドンナ・マサヨの悪魔  村田喜代子

6  二つの月の記憶  岸田今日子

7  アミダサマ  沼田まほかる

8  グレゴリ青山のもっさい中学生  グレゴリ青山

9  猫  ジョルジュ・シムノン

10  ワンちゃん  楊逸



 ノンフィクション

1  怖い絵     中野京子

2  贅沢貧乏のマリア  群ようこ

3  大不況には本を読む  橋本治

4  部長!ワイシャツからランニングがすけてます  ドン小西

5  トニー谷、ざんす  村松友視

6  それは、「うつ病」ではありません!  林公一

7  自己チュー親子  諏訪哲二

8  弟を殺した彼と、僕。  原田正治

9  外国遠足日記帖  岸田今日子

10  不透明な時  三浦和義

次点 地獄のアングル  永島勝司



好きな著者やシリーズに偏った一年でした。
ネットで本を買うのが原因かも。
偶然の出会いがあまりありませんでした。
ハズレをつかみたくないからなあ。
でも、来年は横着せずにちょっと冒険してみたいです。

読みかけもかなりありました。
途中で失くした本も…

とにかく。
来年もいい本がたくさん読めますように。

ことしの更新はこれでおしまい。
お付き合いくださりありがとうございました。
よい年越しをお迎えください。

2008年のまとめ その3 ノンフィクション(かため)

2008年12月19日 | 今年のベスト
ノンフィクション(かため)

1位 「収容所に生まれた僕は愛を知らない」 申 東 赤赤(2008/7/24)

2位 「命あるかぎり」 河野義行(2008/8/13)

3位 「昭和三十年代主義」 浅羽道明(2008/6/28)

4位 「こんな日本でよかったね」 内田 樹(2008/8/21)

5位 「暴走老人!」藤原智美(2008/4/14)

6位 「官邸崩壊」上杉 隆(2008/4/8)

7位 「ドキュメント 死刑囚」 篠田博之(2008/10/20)

2008年のまとめ その2 ノンフィクション(やわらかめ)

2008年12月19日 | 今年のベスト
ノンフィクション(やわらかめ)

1位 「骨董掘り出し人生」 中島誠之助 (2008/9/23)

2位 「あの季(とき)この季(とき)」 岸田今日子 (2008/8/27)

3位 「生きていてもいいかしら日記」 北大路公子 (2008/4/27)

4位 「お父ちゃんと私」 水木悦子 (2008/5/12)

5位 「親方はつらいよ」 高砂浦五郎 (2008/9/7)


●次点

「生き甲斐なんて必要ない」 ひろさちや (2008/11/12)

「辰巳芳子 食の位置づけ」 辰巳芳子 (2008/12/19)

2008年のまとめ その1 フィクション

2008年12月19日 | 今年のベスト
今年のベストを考えてみました。

フィクション

1位「血と骨」 梁 石日(2008/3/13)

2位 「香水」 P・ジュースキント(2008/4/9)

3位 「猫鳴り」 沼田まほかる(2008/4/6)

4位 「夜の来訪者」 プリーストリー(2008/3/14)

5位 「母子変容」 有吉佐和子(2008/3/22)


●次点(順不同)

「箱の夫」 吉田知子(2008/11/15)

「お供え」 吉田知子(2008/5/20)

「残虐記」 桐野夏生(2008/3/15)

「トーベ・ヤンソン短篇集」(2008/9/18)

「自殺自由法」 戸梶圭太(2008/3/31)