快読日記

日々の読書記録

「ほんとうの長州力」KAMINOGE編集部

2021年08月07日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
7月26日(月)

「ほんとうの長州力」KAMINOGE編集部(辰巳出版 2020年)を読了。

雑誌「KAMINOGE」の山本さん(本当は井上さん)によるインタビュー集。というか雑談集。
2012年から2020年まで。

プロレスの話はほぼなくて、
長州の雑談力が遺憾なく発揮されている傑作でした。

ワイドショーネタ(情報源はミヤネ屋)もしっかり押さえてるし、
最初は警戒してた山本さんに対して、回を追うごとにどんどん心を開いていく姿がちょっと感動的です。

休憩を取りながらじゃないと読めないおもしろさでした。


「―― もし、長州さんが山口県知事になったら何をやりますか?
 長州 山口物産展をやるよな(キッパリ)。」(58p)


(引用者注:草間彌生の話になって)
「長州 (略)俺もあんなマルが描けたらと思うよね。ダイナミ~ック!
 ―― いきなり出ました、猪瀬直樹のモノマネ!(笑)
 長州 東京オリンピック、ダイナミ~ック!」(92p)

読了『北の富士流』村松友視

2016年10月02日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
8月13日(土)

千代の富士が61歳で亡くなったように、元横綱の寿命はとにかく短い。
だから、北の富士が70歳を過ぎても元気で、ますます男っぷりを上げていく様子は賞賛に値すると思う。
ものすごくかっこいい吉幾三みたいだ。

この前、9月場所の正面解説をしているとき、お客さんから「長生きしてね」と声をかけられていたけど、それは多くの相撲好きの気持ちを代弁しているはずだ。

夏休み、村松友視の『北の富士流』(文藝春秋)を読んだ。
力士としての強さはもちろん、人を引きつける魅力や艶の話。
「夜の帝王」と称された遊び人・もてキャラのイメージの奥にある神経の細やかさや優しさ、そこらへんをじっと見つめる筆者の目がいい。

中学のときに読んだ『私、プロレスの味方です』以来、村松友視のエッセイやノンフィクションが大好きなのは、こういう勘所の妙というか、「そう!そこを読みたいの!」というポイントを決してハズさないから。
しかも、「書きすぎ」っていうことがない、絶妙なのだ。
トニー谷を描いた作品でも、その陰鬱な部分が切なく書かれていた。

北の富士についても、周りの人たちをとりこにする華やかさと、立ちのぼる色気、そして愛嬌がくっきりと表現されている。

人柄という点では、子供時代からの故郷の友達の証言がいい。
有名になっても地元を大事にして、そこまでするかという気配りの繊細さ。
みんなに愛される理由がよくわかる。

読書中『白鵬のメンタル』内藤堅志

2016年06月18日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
6月17日(金)

図書館で借りたハードカバーの『小暮写眞館』(宮部みゆき/講談社)が厚すぎて持ち歩けず、ちっとも進まない。

午後『白鵬のメンタル』(内藤堅志/講談社+α新書)の続きを読む。
〈白鵬は天才タイプ、感覚タイプのように見えて、意外と論理的である〉(93p)というのを読んで、ふとガッツ石松と楳図かずおを連想する。

それはともかく、論理的というのは分析力のなせるわざで、その分析には感覚の言語化が必須だ。
白鵬に至っては、それを母国語以外の言葉でやるんだから、さらにすごい。
いいときも悪いときも、「なぜそうなるのか」を考えて言葉にするのって、結構しんどいと思う。

あと、伸びる人の第一条件に「素直さ」を挙げているのもなんだかいい。

こういう啓発本、普段はまず手にしないジャンルだけど、ちょっと炭酸系というか、ほどよい刺激になる気がする。

読書中『白鵬のメンタル』内藤堅志

2016年05月29日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
5月28日(土)

宮城野部屋のトレーナーが2013年に出した『白鵬のメンタル』(内藤堅志/講談社+α新書)を読み始める。

心の中にあるものを外に出して(言語化)、それを他人に見せて分析してもらい、適性なアドバイスを受ける、ってどんなかんじなのかと想像してみる。
心強い? 頼もしい? それとも依存しそうで怖い? 心の中を他人にどうこう言われたくない? むしろ言われたい?

ストレスをコントロールして、精神を整える、確かに誰かが併走してくれたら安心だろうと思う。


それはともかくここ数年、協会もメディアも白鵬を叩きすぎではないかと思う。
その言動に協会が苦言を呈するのは立場上仕方ないかもしれないが、世間はもっと白鵬の味方をしたっていいじゃないか。
横綱が全員モンゴル人だって、それが実力なんだから当たり前だ。
「日本出身力士」がどうこう言うなら、いっそのこと外国人の入門を認めなければいい。
誰かを責めるなら、強い外国人ではなく不甲斐ない日本人力士だろう。
外国人を入れておいて、「また外国人が優勝か」とか言うのは止めたらどうか。
白鵬バッシングは、そういう人たちの八つ当たりにすら見える。

最近は、稀勢の里を横綱にしたいがためにルールまで変えようとする勢いだ。
憲法解釈を変えることで目的を果たそうとするどこかの国の政府と同じ精神構造か。
もし、今後たった一度の優勝(それさえ確率は低いが)で稀勢の里を昇進させるようなことがあったら、もう大相撲はおしまいだ。
魁皇や小錦などに何と申し開きをするのだろう。

綱取りの基準は決して下げることなく、しっかり這い上がった者にだけ綱を巻いてもらいたい、受け入れた以上、どこの国の人でも。

…と、隠居の小言みたいになってきたところで寝る。

読了『昭和のチャンプ たこ八郎物語』笹倉明

2016年04月24日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
4月23日(土)

『昭和のチャンプ たこ八郎物語』(笹倉明/集英社文庫)を読了。

小学校3年生のときの思いがけない事故による左目の失明、笹崎ジムの会長一家やファイティング原田一家とのつながり、好きになった女性の話など。
とくにボクシングの場面がキレがよくて読みやすい。
試合の映像を見るよりわかりやすい描写。

それにしても、たこ八郎をこんなにかっこいいと思う日が来るとは!

とにかく胸がしめつけられる1冊。

深く心に響いた本ほど、感想が言葉にならない。
それを記録するためのブログでもあるのになー。

「真説・長州力 1951-2015」田崎健太

2015年10月11日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
《☆☆☆ 10/5読了 集英社インターナショナル 2015年刊 【プロレス 長州力 ノンフィクション】 たざき・けんた(1968~)》

「真説」とまで言い切る自信に「よし。そこまで言うなら読むよ」と購入。

まず、筆者がいわゆるプロレスライターではないところが吉とでたと思います。
だから例えば「噛ませ犬」「キレてないっすよ」発言みたいなベタなネタ(ネタではないけど)も、巷間語り継がれたイメージによる先入観が全然ないところから真相に迫っていて、好感が持てるし、信憑性も高い。

筆者が長州力に何度も会って取材をする、その描写もなんともいえずよかったです。
居酒屋での長州の佇まいなんて目に浮かぶようでした。

序盤、「長州力」という着ぐるみを着る前の吉田光雄が、周囲の人たちにいかに愛されていたか、という話もとてもいい。
プロレス入りしてからの「長州力」の不遇な時代、一気に光り輝いた時期、そして新日でのクーデター騒ぎ、ジャパンプロレス設立と全日リングへの参戦、Uインターとのトラブル、WJの失敗など、「門外漢」ならではの冷静で常識ある大人目線でまとめられる数々の証言は読み応えがあり、このあたりがほぼ真相なんだろうと思いました。

長州がかなり早い段階で“猪木イズム”に感化されているのが意外だったし、商品としての「長州力」をしっかり意識して高く売ろうとする姿勢(マサ斉藤の影響)や、ブッカー・演出家としての才能にも驚きました。
長州って、実直で不器用で“猪木イズム”の対極みたいなイメージがあったので、そこらへんはだいぶひっくり返りますね。
格闘技者としての誇りとプロレスラーという“見せてなんぼ”な職業とのバランスを案外うまくとっているのもおもしろかったです。
佐山・藤波・長州それぞれの違いも際だちました。

あとはこの本、実に多くの関係者に取材をしてあって、そこから浮かび上がる「吉田光雄」「長州力」の立体感がすごいです。
評伝はこうあってほしいという理想に近い。

巻末、筆者の取材を拒否した3人が明かされますが、その3人が拒否したという事実が物語るものこそは大きい。
とくにマサ斉藤との決別は(全体像が見えないけど)悲しすぎます。


もしも。
レスリングのオリンピック選手・郭光雄がプロレス入りせず、選手人生をまっとうして指導者にでもなっていたら今頃どうなっていたでしょう。
…などと考えて余計切なくなった読後なのでした。
最終的には家族まで失った現在の生活について、終盤ちらっと語られますが、強い光が当たるすぐ横には必ず深い影ができる、その狭間に立ちすくむ孤独な男の姿になんともいえない気分になりました。

/「真説・長州力 1951-2015」田崎健太

「吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集」吉田豪

2013年10月03日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
《9/29読了 白夜書房 2013年刊 【プロレス インタビュー】 よしだ・ごう(1970~)》

index:天龍源一郎/武藤敬司/蝶野正洋/藤波辰爾/ドン荒川/藤原喜明/山崎一夫/船木誠勝/鈴木みのる/宮戸優光/鈴木健/安生洋二/菊田早苗/大仁田厚/ミスター・ポーゴ/マサ斎藤

吉田豪といえば紙プロ←プロレスなのに、たしかにプロレスラーのインタビュー本は少なかったですね、意外だ。

読みながら何度も、プロレスって何だったんだろうと考えました。
彼らの話がおもしろければおもしろいほどなんだかせつなくなるのはなぜだ。


今まであまりぴんとこなかったプロレス好きとアイドル好きのメンタリティの類似性がはっきり認識できたのは収穫かも。
この認識が果たして何の役立つかはわかりませんが。
両者とも偶像を追いかけて笑ったり泣いたりしたいんですね。
昔、ドラゴンが写真集で赤川次郎と対談してたのがずっと謎でした。
お互いに相手をよく知らないようで、話は全く盛り上がっていなかった気がする。
でも、そこに「藤波辰爾こそアイドルである」という名言を当てはめるとちょっと腑に落ちる。
かのRYU'S BARに河合奈保子が登場し、村上龍と全く会話にならなかった事件を思い出します。
二人の共通点は「アイドル」です。


吉田豪のインタビューは、「×年のあの試合のあそこはどうのこうの」というやつではなく、プロレスラー(1名を除く)たちの中身をこつこつと掻き出すような作業で、腰を低くもぐりこむように懐に入るかと思えば、まるで相手を慈しむかのような場面もあって本当におもしろい。
オタクとかマニアから一番遠い人なんではないかと。
忘れられないのは、長門裕之へのインタビューですが、今回はマサ斎藤が最高でした。
これを読んだらみんなマサ斎藤大好きになるはず。

菊田早苗にお父さん(死刑反対の菊田幸一)のことを聞いてくれたのも素晴らしい。いい仕事だ。

/「吉田豪の喋る!!道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集」吉田豪

「実録 プロレス裁判」別冊宝島編集部

2013年06月09日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
《6/6読了 宝島社 2013年刊 【プロレス】》

参院選、猪木が維新から出馬するようですが、プロレスラーってのはほんとに状況が見えてないっていうか、見ないっていうか…、なんだかため息がでる。
常人にははかり知れない何かを持ってるんですね。
あるいは何かを持っていないのか。
そんな彼らへの「そこがいいんじゃない!」っていう姿勢こそがプロレスを慈しむ心なんですよ。
談志師匠をまねて言えば、プロレスこそ人間の業の肯定だ。
セット・ジニアスなんか見てると特にそう思う。

しかし、それにしてもこの本。
詐欺にひっかかったり、せっかく現れたスポンサーからのお金を湯水のように使っちゃったり、8億かけたイベントで視聴率5%しか取れなかったり、ファイトマネーが支払われなかったり、チャンピオンベルト持ったままいなくなったり…という民事訴訟はまだ「バカだな~。さすがだな~。」で済む話。
(かわいそうなのはアジャコングくらい)
でも、練習中の事故で亡くなった練習生とその遺族への酷い対応、場外乱闘で大怪我を負った観客に対する不誠実な態度を知ると、やっぱり気が滅入ります。
リングに立つ人たちに常識は求めないけど、運営する側には絶対必要でしょう。

ひとことで言えば、プロレス業界人たちにどんだけ問題解決能力が欠けているかを指摘する本、というわけです。
「資金不足、常識不足、誠意不足」(154p)とまで言われる始末。
むー。

しかし、それでもあえて言えば、プロレスってのはそもそも相撲やヤクザと同じ、世間からはじかれたりはぐれたりした者たちの受け皿、アジールっていうんだっけ?そんな面があると思うんです。
そういう考え方が通じず、プロレスをスポーツや格闘技か何かと同一視するような精神だけで語られるのはちょっとなあ。

唯一の救いは、ラストに棚橋事件(痴情のもつれから女に刺された殺人未遂事件)を持ってきたことでしょうか。
プロレスラーは愚かなやつかもしれないけど、悪いやつではないんだ、という印象が残ります。

…ん?それでいいのかな。

/「実録 プロレス裁判」別冊宝島編集部

「別冊宝島 プロレス黒い霧」/「お父さんのバックドロップ」中島らも

2012年03月15日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
《3/13読了 「お父さんのバックドロップ」集英社文庫 1993年刊 【日本の小説 短編集】なかじま・らも(1952~2004)》

この別冊宝島プロレスシリーズも、金銭がらみの裏事情やWJ崩壊の顛末、なんていうあたりはそれでもまだおもしろくて、
プロレスラーって人生そのものがプロレスなんだなあ、という変な感動もあったりしたものですが、
この「黒い霧」はもうだめ。
ノアが巻き込まれた詐欺事件に始まり、元レスラー死亡「事故」、練習生が亡くなった「事故」など、読んでて鬱々としてきました。
ほとんど“犯罪実録”。
腐乱したプロレスの死体をつつき回し、その病巣をほじくりかえして、一体何がしたいのか。
この本を作る人たちにあるのはプロレスへの愛か憎悪か。
もし愛ならかなり倒錯しているし、憎悪で本を作るなんて労力の無駄。
まあ、それを読んでる自分てのがまた始末に負えないわけですが。
あんまり気が滅入ったので、すがる思いで「お父さんのバックドロップ」。
こちらはちょっと切なく、でも心が温まります。
悪役プロレスラー、落語家、動物園の園長と魚河岸の大将、テレビマンという5人のお父さんが登場するおもしろくてほろ苦い4つの短編集。

「おもしろいのは、大人というのは子どもが大きくなって、まったく性質のちがう『大人』というべつの人間になるのではないということです。大人には子どもの部分がまるごと残っています。子どもにいろんな大人の要素がくっついたのが大人なのです。そう思って、きみたちのお父さんを観察してみると、このことはすぐにわかるはずです。(あとがき 179p)」


/「別冊宝島 プロレス黒い霧」
/「お父さんのバックドロップ」中島らも
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「「大相撲八百長批判」を嗤う 幼稚な正義が伝統を破壊する」玉木正之

2011年11月10日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
《11/8読了 飛鳥新社 2011年刊 【相撲 日本】 たまき・まさゆき(1952~)》

相撲は、神事・興行・武道(格闘技)という3本柱の上に成り立つものである一方、
ヤクザや役者や芸人の世界と同じ“アジール”(世間からはぐれた人間の避難場所)でもある、
清濁併せ呑む懐の深さがあり、華やかさと暗い陰の両方を持つ、美しくて曖昧で複雑なもの、
それが白か黒かの近代スポーツの理論で破壊されるのはとんでもないこと-というのが筆者の主張で、わたしも激しく同意します。
一連の不祥事やら疑惑やらで叩かれた相撲界ですが、一度女性キャスターが「あの相撲の試合は」と言ってるのを見て、そんな人たち(おそらくまともに相撲を見たことがない)に八百長だ何だと批判されてるのかと思うと情けなくなりました。
こういうピュアでクリーンで薄っぺらい日本人が自分たちの独特の文化を破壊していくのでしょう。

筆者の考え方には大賛成ですが、さらにいいのはこの本のつくり。
対談がメインなんだけど、同じような意見を持つ人だけでなく、週刊ポスト(週刊現代より以前から大相撲の八百長問題を厳しく追及していた)の記者との対談も収められている充実っぷり。
八百長批判する人のすべてが無知で無粋なわけではなく、そこには相応の主張があるわけで、
筆者との、じっくり組み合った四つ相撲のような対談も読み応えがありました。

今の相撲界が抱える問題というのは、日本人が抱えるそれと見事にリンクしていることもよくわかります。
運営する人たちにいまひとつ危機感や覚悟がないように見えるところもそっくりです。
結局、文化というのは外からの攻撃より中からの崩壊によって消滅していくわけだから、相撲界の危機は日本人の危機と言っても言い過ぎじゃないと思うんです。

3月の震災のあとに書かれたあとがきも胸に響きます。
図書館にリクエストした本でしたが、あんまりよかったので自分でも買っちゃいました。わはは。

/「「大相撲八百長批判」を嗤う 幼稚な正義が伝統を破壊する」玉木正之
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「プロレス・格闘技 超"異人"伝」

2011年07月02日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
《7/1読了 スーパーバイザー/吉田豪 洋泉社 2006年刊 【プロレス】》

次々と新ビジネスを立ち上げ、永久電機という夢を追いかける闘魂兄弟、
日本にモサドみたいな諜報機関を作ろうとしているタイガーマスク、
プロボディガード集団「闇部隊ブラック」の命がけの入門テストに合格、入隊が決まった直後、欽ちゃんの弟子になった殺人武術の継承者、
少年時代、ひょんなことから忍者屋敷にたどりつき、そこで忍者の弟子になったら、兄弟子が犬だったという仙人、
誰も見ていないところでも人に襲いかかるインド人、
などの「異人(むしろ偉人)」列伝。

…と言うと、なんだかお笑い本みたいですが、そんな単純な本ではないんですこれが。

例えば船木誠勝は6歳のとき、初めて映画館に行って「燃えよドラゴン」を見た。
その感想が「なんでこんな大きな画面で見せられるんだ!」。
あるいは私淑する松田優作と自分を比べて「優作は優しさに作ると書く、俺の本名は優しさに治で優治、不思議だ…。」
こんな調子の船木ですが、彼のインタビューって、読んでるうちに気持ちよくなってくるんですよね、目が奇妙なほど穏やかに澄んでいて、藤岡弘、みたいだからかな。不思議だ…。

他にも、長州力のラリアットに象徴されるファストプロレスに対して、じっくり戦うスロープロレスを提唱する西村修、
真のナショナリストはインターナショナリストであると説く、骨法の堀辺正史、など
気が付くと「そうだよなあ」なんて頷いてしまう、戦う男たち恐るべし。

最後に「週刊ファイト」のI編集長こと故・井上義啓氏のこんな発言を引用します。
「前田とまともに話してみろよと。猪木にしたってそうだよ。物凄い教養があるんだな。だから俺はプロレスラーが奇人だとかいうことは喋りたくないんだよな。ハッキリ言って俺らより上だよと。」

/「プロレス・格闘技 超“異人”伝」
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「別冊NHKウイークリーステラ 大相撲中継 平成22年名古屋・秋場所合併号」

2010年08月23日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
《(財)NHKサービスセンター発行 2010年9月1日号 【雑誌 相撲】》

掟破りの(掟なんかないけど)雑誌です。

全体の3割を、相撲界の現況や今後への提言といった特集記事に費やし、なかなか読み応えがありました。
欲を言えば、生中継をやめたNHKも当事者なんだから、名古屋場所を終えた今、この措置について改めて自省してもらいたいです。

内容はというと、とにかく問題が山積しすぎて、何からどう手をつけたらいいかわからない、というかんじ。
いわゆる「識者」の主張も人それぞれで、考えれば考えるほどこんがらがってきます。
でも、そのもつれきった糸も、辛抱強くほどいていけば1本の美しい綱のはずなんです。
アンケート企画「相撲界再生への道」で、大見さんという元記者が、この混乱を生まれ変わるチャンスととらえて「大相撲界は、度重なる紛擾(ふんじょう)事件、戦中戦後の苦難の時代も生き延びてきたのだから。伝統とは、生き残る知恵だと思っている」といっています。
実は相撲界は元来、柔軟な対応を得意としてきたところ。
新理事長は外部の人がいいといわれながらも、結局、放駒親方に決まってよかったです。
やっぱりここは力士出身者が自力で改革をし、乗り切ってもらいたいから。


名古屋場所で地元企業が出した「頑張れ 名古屋場所」「僕達は相撲が好きだ」という懸賞幕の写真にじ~んときました。
がんばれ 大相撲。

あ~。ちょっと語りすぎてしまった。

→「力士はなぜ、四股を踏むのか? 大相撲の『なぜ?』がすべてわかる本。」工藤隆一

「ドルジ 横綱・朝青龍の素顔」武田葉月

2010年07月27日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
《7/27読了 講談社文庫 2006年刊(2003年に実業之日本社から刊行された単行本に第8章・対談・成績を加えて文庫化) 【相撲】たけだ・はづき》

タミルちゃんとの復縁が最近噂のドルジですが、
子煩悩で愛妻家の彼にとって、あのタイミングで日本の相撲をやめたことはむしろラッキーだったわけです。
力士としてはよくない幕切れだったけど、ドルジ個人としては、また温かい家庭に戻れたんだから。
冬巡業中止だって、考えようによっては、
古傷を抱えて、治す暇がない多くの力士たちにとっては、この上ないチャンスじゃないですか。
ね? ものは考えようです。

そこで、4年前に出てた(このまえ本屋で見つけるまで知らなかった)ドルジの評伝です。
身体能力と強運と精神力だけで勝負してきたような見方をされることが多いドルジが、どれだけの努力と試行錯誤を積み重ねてきたか、どれだけの愛情を周囲に注いだか、など、ファンにとっては孫を見るように目を細めて楽しめる1冊。
とくに明徳義塾高時代のエピソードが読み応えありました。
もう一人の龍、朝赤龍ことダシにスポットが当たっているのもよかったです。

あえてクレームをつければ、
相撲ライター武田葉月はドルジ贔屓で、安心して読ませる反面、悪い話は極力避け、批判や分析・考察をほとんど加えずに淡々と書いているので、ちょっと御用記事みたい。

ドルジ好きには、これと「横綱・朝青龍」のロングインタビューとの併読をおすすめします。

→「力士はなぜ、四股を踏むのか」
→「親方はつらいよ」

「イチローに糸井重里が聞く」 「キャッチボール」製作委員会

2010年06月28日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
《6/26読了 朝日文庫 2010年刊(「キャッチボール ICHIRO meets you」(ぴあ 2004年刊)を改題) 【対談 イチロー】》

イチローの話はどれも素晴らしい。
質問に対する姿勢も紳士的。
今まで同じ質問に飽きるほど答えてきたんだろうなあ、と思わせるパーフェクトなお言葉。

でも、人の心が水をたたえた甕(かめ)みたいなものだとしたら、
このインタビューって、一番表面の澄んだ部分をそっとすくい取っているだけってかんじです。
唯一、その水面が乱れて、底に沈んでいた澱が煙のように浮き上がって見えそうだったのは、
「あなたにとってお金とはなんですか」という質問のときでした。
その瞬間を逃さずグイグイ掻き混ぜて欲しかったけど、糸井重里にそれを求めるのは無理かもしれない。
糸井重里って、年齢相応のコクみたいなのがほとんど感じられない人ですよね。
何を語っても薄っぺらくなる。
そういう芸風なのか?

それはともかく。

さらに巻末に、「51個のイチロー哲学」と題して、この本でのイチローの名言がまとめてあるんです。
今読んだばかりの発言がですよ。
こういうのお節介っていうんです、たぶん。
バラエティ番組の目障りなテロップみたい。

名言かどうかは読者それぞれが決めることです。

「元気ですか!? ニッポン!! 日本を元気にする猪木の言葉」アントニオ猪木

2010年05月24日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
《5/23読了 ポプラ社 2010年刊 【プロレス】 あんとにお・いのき(1943~)》

ポプラ社と猪木という異色の組み合わせ。
猪木のよく知られた名言の数々(何度読んでもおもしろい)と解説、インタビュー、猪木大喜利(正確には「猪木爆笑問答」)という内容で、
かなりマイルドな「猪木入門」。
どうやらこの本のターゲットは若年層のようです。
解説が終始「猪木さん」と呼んでいたり、そのダーティーな名言は完全無視だったりして、なんだかすごい違和感です。

しかし。
毒抜きした猪木に一体どんな魅力があるというのでしょう。
そして、なぜこのタイミングで「ビギナー向け猪木本」なのか。まさか政界復帰か。
そもそも誰が、何の目的で、こんなノンアルコールビールみたいな猪木本を出したのか、
これで本当に新規のファンが獲得できるのか、
「毒」や「狂気」こそが猪木の本質である以上、この本では逆効果なんじゃないか、
疑問は尽きません。
こんな中途半端な本、誰が買うんだろう。
…あ、わたしみたいなやつか。

→アントニオ猪木「もう一つの闘い 血糖値596からの糖尿病克服記」