快読日記

日々の読書記録

「お供え」吉田知子

2008年05月20日 | 日本の小説
《補助線のおかげで、ぼやけていたピントがパシッと合いました》



10年近く前「箱の夫」を読んだときは、確かに船酔いみたいな独特の浮遊感(←船酔いしたことないけど)がおもしろかったのですが、
なんだかとりとめがなくて、結局掴みきれないまま読み終えてしまいした。
それが先日、岸本佐知子のエッセイを読み返していて、
"村田喜代子が妖怪なら、吉田知子は幽霊だ"という一節にぶつかり、
その途端、わたしの記憶に鮮やかな補助線が1本、スーッと引かれたです!
あのとき掴み損なったのはそれだ!
そのまま図書館に向かったのは言うまでもありません。
村田喜代子と並べられたことも、わたしのツボを押しまくりです。
それで、この短編集はどうだったかというと、もう大満足!
全体的に「悪夢」でした。
リアルに所帯染みた日常が淡々と語られ、それにつきあっていると突然、すでにこの世じゃないところに放り出されていることに気づかされる。
自分がどこにいるのかわからなくなる。
「海梯」のラストなんて思わず「ごわいぃ~」って声に出してしまいました。

■5/20読了 福武書店 1993年刊 【日本の小説】吉田知子(1934~)