快読日記

日々の読書記録

「昭和三十年代主義 もう成長しない日本」浅羽通明

2008年06月28日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《昭和30年代ブームという思想》



日本人が昭和レトロブームにハマったのには理由があった!という帯の通り、
このブームを映画「ALWAYS 三丁目の夕日(正・続)」「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」や宮部みゆき「模倣犯」などから丁寧に分析します。
それは快刀乱麻を断つような明晰さで、あ~そういうことだったのかーの連発です(とくに「模倣犯」論)。

日本はもう成長しない、経済的にも技術的にも飽和状態だ。
そんな閉塞感を抱える人は多いでしょう。
日本はあらゆる意味で折り返し点を過ぎ、復路に差し掛かっているという指摘にもうなずけます。
そして目指すモデルが大江戸八百八町でもバブル期でもなく「昭和30年代」の理由にも納得です。


でも、本書でも言及される「全能感」漬けで、思い通りにならないことのすべてを人のせいにする人間(秋葉原の通り魔のような)を潜在的にかなりの数かかえるこの国がその折り返し地点を周りきるには、リスクも結構あるのではないか、そんな風にも思います。
浅羽氏は「貧困層」だってパソコンを操り、携帯電話を所持しているではないかというけど、そうしたツールがなまじあるからこそ悲劇的なんじゃないかと。
本書が予言する今後の日本が進む道を阻むのは、全能感培養ツールともいえるネットなんじゃないか。
そんなことをブログに書いている自分にもやもやしつつ。

■6/28読了 幻冬舎 2008年刊 【社会評論 日本】浅羽通明(あさば・みちあき 1959~)