快読日記

日々の読書記録

「自分の体で実験したい-命がけの科学者列伝」レスリー・デンディ/メル・ボーリング

2012年08月18日 | 暮らし・健康・理科っぽい話
《8/16読了 梶原あゆみ/訳 紀伊國屋書店 2007年刊 【自然科学】 Leslie Dendy/Mel Boring》

ときには命を賭けてまで、“自分の体で実験”した科学者や医学者の話。
「訳者あとがき」にまとめてある内容をもとにざっくり紹介すると、こんなかんじです。

1 人間はどのくらい高温の空気に耐えられるか、みんなで試した。イギリス1770年代

2 食べ物はどうやって消化されるのか、自分の体でやってみた。イタリア1770年代

3 どんなガスや液体を摂取したら麻酔になるか、吸ってみた。アメリカ1840~70年代

4 ペルー特有の熱病の解明のために自分に菌を感染させた。ペルー1885年

5 黄熱病解明のために自分を実験台にした。キューバ1900~1901年

6 ラジウムの研究の末に被爆した。フランス1902~1934年

7 炭坑や海底などの危険な場所で働く人のために、自ら危険な気体を吸い続けた。イギリス1880~1940年代

8 自分の体を使って心臓カテーテル法を試み、成功させた。ドイツ1920~1950年代

9 スピードと減速時にかかるGの限界に挑戦した。アメリカ1940~1950年代

10 たった一人で長期間隔離されると心身にどんな影響が出るかを知るために洞窟にこもった。アメリカ1989年

これらの実験で命を落とした人も何人か出てきます。

この中で、やってみたい実験ありますか。
2番目のなら命を取られる心配はなさそうですが、袋に肉を入れて飲み込み、排泄された袋から中身を取り出して調べるとか、胃液のはたらきを知るために空きっ腹で自らの胃液を吐き出すとか、やっぱりキツそう。

10の、洞窟実験をした女性だけは科学者ではなく、インテリアデザイナーです。
自ら志願して被験者になった彼女がその後漏らした「できるかどうか自信のなかったことでも、今ならできます。でも、ときどき自分がもうこの世にいないような気がするんです」(190p)という言葉はちょっと怖い。

7の、呼吸の研究をした親子は、窒素・酸素・二酸化炭素・ヘリウムなどからいくつかの有毒ガスまで、さまざまな気体を吸っています。
この、かなり命がけ度の高い、危険な実験をした彼らの家の家訓が「耐えよ」というのがまたすごいです。

結果的には世のため人のためになる実験だけど、やる側の人はそういう目的は二の次、結局は真理の追究の魅力に捕まり、とりこになっているんだろうと思います。
彼らに共通するのは“知りたい!”という強い欲求と好奇心、集中力、そして忍耐強さです。

山崎努の本で取り上げられていて、面白そうだったので読んでみました。
期待以上でした。

/「自分の体で実験したい-命がけの科学者列伝」レスリー・デンディ/メル・ボーリング
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