快読日記

日々の読書記録

「夢の中 悪夢の中」三原順

2011年10月04日 | 漫画とそれに関するもの
《10/4読了 白泉社文庫 2011年刊(主婦と生活社から刊行された同名のコミックスを文庫化) 【漫画 短編集】 みはら・じゅん》

収録作品:夢の中 悪夢の中/ベンジャミンを追って/彼女に翼を/帽子物語

「夢の中 悪夢の中」
血のつながった家族というのは意外と難しい。
そうは言っても別の人間なんだから、何を考え、どう感じているかはそれぞれのはずなのに、なまじ「親子だから」「きょうだいだから」すべてわかっている、私が好きなことは子供も好きに決まってるっていう何の根拠もない安心感が心を鈍くさせるので、かえって厄介です。
苦しんでいるのが子供だったら逃げ場もない。
普通ここで終わるよな、という場面から、さらに物語が続き、主人公の苦痛が絶望に変わるところまで徹底的に追っているところもすごいです。

“家族という他者”というテーマは例えば山岸凉子「恐怖の甘いもの一家」でもコミカルに描かれていますが、実はかなり深~い主題。
三原順の太い輪郭線は他者との境界線の厚みを、山岸凉子の細く尖った描線はその脆さを象徴しているような気がします。

あとの3編も傑作。
終盤にストーリーがクルッと回転する瞬間もたまらない。
寓話的要素が一番強く、唯一明るさがある(主人公の解放の予感で終わる)「帽子物語」は感動的でした。

/「夢の中 悪夢の中」三原順
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