快読日記

日々の読書記録

「無差別殺人の精神分析」片田珠美

2014年02月04日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《1/21読了 新潮選書 2009年刊 【犯罪病理 社会】 かただ・たまみ(1961~)》

秋葉原無差別殺傷事件、池袋通り魔事件、大阪教育大池田小事件、コロンバイン高校銃乱射事件などを取り上げ、無差別殺傷事件を起こす人間のメンタリティについて考察した本。

「我々は社会の中で生きている以上、社会の影響を無視できないのは当然である。だが、だからといって、事件の背景を単純に「格差社会」や「イジメ」などの社会的要因のみに求めてはならない。今必要なのは、一体何が殺人の行為化への最後の一線を越えさせるのか? 凶行に走ろうとする人間を我々の社会に繋ぎ止めるのは何なのか? について分析し、人間の心のメカニズムを明らかにすることである」(9p)

精神分析の手法を駆使して犯人たちの内的共通点を次々と指摘します。
こういう本を待っていたんだ、という気がしました。

アメリカの犯罪学者がまとめた、大量殺人を引き起こす6つの要因をもとに犯人たちを分析していて、これがすごく腑に落ちました。
特に「他責的傾向」。
これは本当に実感しています。
とにかく自分のせいじゃないと主張する人が多いこと。
家庭が悪い、仲間が悪い、学校が悪い、会社が悪い、果ては国が悪い、責任者出てこい!みたいな。
彼らは常に自分を被害者だと思っていて、その被害者意識は恐ろしいほど執拗。
自分が当事者となって解決する感覚がないので、いつまでたっても思うようにことが進まない。
そして、それもこれも人のせいにしてしまう。
その繰り返しです。地獄だ。

もうひとつ興味深かったのが「投影」。
これは「自らの内なる悪」への対処法で、
それを「外部の他者に投影して激しく攻撃す」(44p)ると無差別攻撃、自分に向かえば自殺になる。
膝を打ちました。納得。

こういう事件が起きるたび「社会が悪い」といった論調になっちゃう世間の傾向に疑問を感じている人におすすめしたい1冊です。
その「社会のせい」という考え方そのものが、無差別犯を培養しているわけです。

/「無差別殺人の精神分析」片田珠美