快読日記

日々の読書記録

「命あるかぎり 松本サリン事件を超えて」河野義行

2008年08月13日 | エッセイ・自叙伝・手記・紀行
「恨むなどという無駄なエネルギーをつかって、かぎりある自分の人生を無意味にしたくない」(188p)
ほんとにそのとおりだなあと思いつつ、毎日糸屑みたいに小さなことにもイラッとして毒づいているわたしです。

そもそもこの河野さんはどんな子供時代を過ごし、どんな人生を歩んで来たのか。

冤罪の恐ろしさ(誰もが被害者にも加害者にもなり得るという意味も含めて)にビビりながらページを繰り、
そこで自分と家族を必死で守る河野さんの姿に何度も涙をこぼしながら読み終えた「『疑惑』は晴れようとも」から十数年、
この本で気付いたのは、河野さんが強い人とか信念の人とかいうより「公平な人」であるということです。
思考のスケールの大きさと大らかさを持ったこういう人がいわゆる「市井の人」なのに驚き、未曾有のテロ事件に巻き込まれた偶然にも言葉を失います。
とくに事件後、長野県の公安委員の一人として職務を全うした顛末は、報道ではなかなか知ることのできないエピソードが多く、いろんなことを考えました。


先日、奥様が亡くなられたとの報道に触れました。
まだ後遺症に苦しむ被害者とその家族がたくさんいらっしゃることを忘れてはいけないと思います。

■8/13読了 第三文明社 2008年刊 【日本のエッセイ 松本サリン事件】こうの・よしゆき(1950~)