快読日記

日々の読書記録

「永い言い訳」西川美和

2015年08月13日 | 日本の小説
《☆☆☆ 7/18読了 文藝春秋 2015年刊 【日本の小説】 にしかわ・みわ(1974~)》

中心となる登場人物は二組の夫婦。
小説家&美容師、トラックの運転手&看護師。

この中で唯一“虚業”の“小説家”が主人公です。

彼を通して読者もちょっと斜めに世間を見て、偏差値が低そうな人を小馬鹿にし、しかし、そういう人が子供を持ち家庭を支え社会に根を張って生きる姿にうろたえる。
そして、不意にそういう自分の未熟さや脆弱さを直視して胸がザワザワする。
でも、理解はできても共感はしにくい人物なんですよね、そこもうまい。

残りの3人は“本を読まない人”です(実際に本を手に取るかどうかという話ではなく、比喩的に)。
“読む人”は“読まない人”を軽視しつつ、奥底では羨望して自分の不完全さを省みる。
“読まない人”は“読む人”に一目置きつつ、頭でっかちで不健康な生き物である彼を理解の範疇から外す。
お互いがコンプレックスとプライドを抱きながら交わったり離れたりする。
そういう細かーいところがえげつなくなるギリギリのところで書かれていて、ずしりと重い1冊でした。
主人公が子供に接する場面もすごくよかった。
子供の書かれ方も自然で、嘘っぽくなかった。

映像化するなら主人公の衣笠くんは稲垣吾郎でお願いしたいです。

/「永い言い訳」西川美和