快読日記

日々の読書記録

「憚りながら」後藤忠政

2010年08月27日 | エッセイ・自叙伝・手記・紀行
《8/27読了 宝島社 2010年刊 【自叙伝】 ごとう・ただまさ(1942~)》

久しぶりに徹夜の一気読みをしました。
得度した元・後藤組組長の回顧録。
生い立ちから始まる前半の武勇伝よりも、後半、彼が関わったさまざまな事件や人物についての叙述が興味深いです。
具体的には野村秋介との交流、数々の暴力団抗争、創価学会とのトラブルの顛末、伊丹十三襲撃事件など、
すべてを語っているわけではもちろんないだろうけど、
それはまさにヤクザ視点から見た戦後昭和史。

警察が「暴力団追放」を掲げる一方で、一流と言われる企業家・政治家・宗教団体、そして当の警察までが彼らを利用するだけして使い捨てにするという矛盾した現実もあります。
さらに「反社会的勢力」といった新たな呼び名を与え、世間が徹底的に彼らを排除しようとしている今、代わりに台頭しているのが「小チンピラ」「半チンピラ」(どういう種類の人間を指しているかはぜひ読んでいただくとして)です。
本当にタチが悪いのはどっちでしょうか。
そして、社会にとってヤクザとは何なのか。
時々本を閉じて考え込んでしまいます。
日本人がどんどん劣化し、幼稚になっていく様子をなげく終盤も、ストンストンと胸に来ました。

口述したものを編集者が構成していて、その率直でスパイシーな語り口もしっかり生かされています。
随所に挿入される解説も適切でわかりやすい。