快読日記

日々の読書記録

「トニー谷、ざんす」村松友視

2009年08月29日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《8/10読了 毎日新聞社 1997年刊 【ノンフィクション】 むらまつ・ともみ(1940~) ※「み」は示偏》

高校時代にエアチェック(死語)したトニー谷特集(DJは大滝詠一!)のテープはわたしのお宝です。
今でもほとんど歌えます。
カラオケに入っていないのが残念です。
何がそんなに初々しい女子高生を引きつけたのか。
それは、全体から漂ううさん臭さであり、世間を斜に見たような知的な身軽さであり、
何よりグッときたのは拭いされない「暗さ」みたいなものかもしれない。
陰影のある芸って最近なくなりつつある気がしませんか。

そんなわけで「プロレスの味方」村松友視がトニーのことを書いたこの本を見つけたら、飛び付かずにはおれません。
永六輔を始め、トニーと接した人たちの話(7割が悪評)を聞きながら、
胸が締め付けられるような気持ちになりました。
過去を隠し、誰にも本音を見せないトニーが、愛児誘拐事件の際、支えてくれた友人に、父親としての自分をさらけ出してしまう。
その直後から付き合いが途絶えたというエピソードも切ないです。
男というのはまったく、脆く儚いにゃ~。
村松&トニーという切ない系ダンディの組み合わせの妙が生んだ名作だと思います。

永六輔が書いた帯もぜひご一読ください。