快読日記

日々の読書記録

「加害者家族」鈴木伸元

2011年02月08日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《2/6読了 幻冬舎新書 2010年刊 【社会 犯罪】 すずき・のぶもと》

ある中学の校長が、松本智津夫の四女にこう言い放ったそうです。
「あなたがたのお父さんは、たくさんの人を殺しましたね。あなたが死んでも、しかたがないでしょう。」
しかたなくねーよ!
…というわけで。
本書の中で、宮崎勤の父親の知人が、
「加害者の家族は、罪を犯した本人以上に苦しむことがある」と語るように、
彼らが突き落とされた地獄に比べたら、むしろ刑務所にいた方が気楽かもしれません。
脅迫や嫌がらせに苦しみ、
被害者家族のように社会に訴えることも許されず、
名前を変え、住み家を変えて、いつばれるかとびくびくしながら生きていく家族。
手を差し延べてくれる人の人生まで狂わせてしまうこともあり、
自殺に追い込まれることも珍しくないことは周知のとおりです。
本書の終盤には、加害者家族の救済の動きについても触れています。
たしかにそれも必要でしょう。

しかし、それより何より一番印象に残ったのは、日本の「世間」の異様さです。
自分とは全く無関係の加害者の家にせっせと嫌がらせ電話をかけたり、わざわざ遠方から車を乗り付けて家屋に落書きをしたり。
気持ち悪いやつらだ。
おそらく「人間のクズ」とはこういう人たちのことを言うのでしょう。

日本の加害者の家には段ボール箱いっぱいのいやがらせの手紙が届き、
アメリカの高校で銃を乱射した犯人の母親には、同じ量の励ましの手紙が来たというエピソードも、日本人として悔しい話です。


/「加害者家族」鈴木伸元
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