快読日記

日々の読書記録

「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」町山智浩

2013年02月11日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《2/9読了 文春文庫 2012年刊(単行本2008年文藝春秋) 【エッセイ アメリカ】 まちやま・ともひろ(1962~)》

アメリカで暮らす著者が、宗教・戦争・経済格差・政治・メディアなどのあらゆる方面から、今の、生のアメリカを語る本。
この人、BSの、オセロの白い方と一緒にアメリカの本邦未公開映画を見せる番組に出てる人?

ひとつの章のネタで1冊書けるんじゃないかというほどの濃い内容を、歯切れの良い文章でスパッと読ませます。すんごくおもしろい!
ここに書かれているような深刻な問題がてんこもりで、それでも世界のリーダーみたいな顔で君臨してる力ってどこから来るんでしょう。
あきれたり笑ったり怯えたりしながら、それでも感心したのは、いろんな社会問題が発生するたびに、それを追究しようとする映画が作られること。
これもアメリカの力かと。
日本で昨年公開された原発事故の映画「希望の国」はスポンサーがつかず、結局外国資本で作られたと何かで読みましたが、アメリカではそういう映画でも国内にお金を出してくれる人がいるってことですよね。
たとえそれが反対勢力からのものであったとしても、問題を公にしようって気があるだけアメリカの方がはるかにマシだと思いました。

あとはブッシュがどんだけポンコツかってことも、その支持層である“福音派”のキテレツっぷりも、共和党と民主党の考え方の違いもよくわかった。
だけど、著者はアメリカを批判したりバカにしたりしているわけでなく、クールにつっこみながらもその底力みたいなものを認め、オバマやマケインの例で“フェアなアメリカ人”の存在も示していて、なんていうか嫌みがないんです、この本。

「それでも懲りずに、アメリカ人はまた別の夢の風船を探して膨らますんだよね。割れるまで。」(121p)

果たして今の日本には“夢の風船”を膨らます体力・気力があるだろうか。
よその国を笑ってる場合じゃないよなあ、と思うとしょぼんとしてしまいます。

/「アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない」町山智浩