快読日記

日々の読書記録

「罪悪」フェルディナント・フォン・シーラッハ

2012年06月20日 | 翻訳小説
《6/19読了 酒寄進一/訳 東京創元社 2012年刊 【翻訳小説 短編集 ドイツ】 Ferdinand von Schirach(1964~)》

収録作品:ふるさと祭り/遺伝子/イルミナティ/子どもたち/解剖学/間男/アタッシュケース/欲求/雪/鍵/寂しさ/司法当局/清算/家族/秘密

刑事事件専門弁護士である作者の2冊めの短編集。
事実は小説より奇なり、の言葉通り(実際に起きた事件を題材にしている)、思いがけない方向にコロンと話が落ちていくおもしろさがやみつきになります。
極端に無駄を削ぎ落とした文章にも一段と磨きが掛かっていて、読み心地も満点。

出てくる人たちが、その普通さ・特殊さをひっくるめて“そこらへんにいる”人たちであることは「犯罪」にも言えることだったけど、本作はさらに彼らへの共感度が増す内容になってました。

ふと思い出したのは横光利一の「蠅」という短編です。
本作で、蠅にあたるのが作者と同名の弁護士・シーラッハではないかと。
愚かで、切なくて、罪深く、尊い人間たちを、ただ見つめるだけなところがそっくりだと思いました。

あえて好きな作品を選ぶとしたら「雪」「司法当局」かなあ。
「鍵」「解剖学」「子どもたち」「家族」もよかった。
まあ、ハズレなしなんですけどね。

→「犯罪」フェルディナント・フォン・シーラッハ

/「罪悪」フェルディナント・フォン・シーラッハ
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