快読日記

日々の読書記録

「もいちどあなたにあいたいな」新井素子

2012年02月05日 | 日本の小説
《2/4読了 新潮社 2010年刊 【日本の小説】 あらい・もとこ(1960~)》

ケーキみたいな構成。
表面に見えるのがSFというデコレーションだとしたら、
その下に「決定的な危機に直面したときの驚くほど脆い人間の心」、
さらに一番下には、「すべての女性が抱える(と言ってもいい)“怒り”“痛み”“絶望”」、←この層があるのとないのとで、作品の厚みは全然違う!
そして、この2種類のスポンジに挟まれたフルーツやクリームにあたるのが、懐かしささえ漂う素子節。←1行でわかることを5行くらい使っている、この間怠っこさ!

…うまく伝わってるか?

とにかく、
新井素子と言えばSF!みたいなイメージがあるけど、実は心理小説というか、向心力(物体が円運動をするとき、円の中心に向かおうとする力)が強い小説の方にこそ、持ち味が生きていると思います。
主婦の一人称で、その夫の帰りが遅いと嘆くだけの話なのに底なしに怖い「おしまいの日」などがいい例です。
本作はそこにSFという小道具(あくまでも小道具。)が使われているので、この前読んだジャック・フィニイを思い出しました。
そういえば、本作にもフィニイの名前が出てきます。

/「もいちどあなたにあいたいな」新井素子
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