快読日記

日々の読書記録

「骨の記憶」藤原智美

2011年08月13日 | 日本の小説
《8/12読了 集英社 2011年刊 【日本の小説 ノンフィクション】 ふじわら・ともみ(1955~)》

前半が小説、後半にノンフィクションという変わった構成で、テーマは「骨」。

小説の方は、「背負いきれない重荷」を抱えて生きる少年を縦軸に、彼のいびつな家族や、いかにも体温の低そうな子供たち、怖い夢みたいな「骨」をめぐる人々のようすなどが、カリカリと硬質な筆致で描かれています。
抽象的なのにリアル、透明なのにドロッとしてる。
自閉症の兄と、病んだ母、家庭では全く顔が見えない父親、そこで不安、怖さ、心細さ、孤独に押しつぶされそうになる弟、こういう現代家族を書いたら藤原智美は天下一品だなあと堪能しながら、弟と一緒にどんどん息苦しくなってきます。

後半は、「骨」のイメージに魅了され、取材した数年間の記録。
作家にとって「失われた生」の象徴であった「骨」が次第に表情を持ち始め、
やがて生きている人間に対して語りかけ、問いかけてくるようになるまでの取材と考察です。
「骨」を主題にしたノンフィクションとしてもおもしろい(特に人間の骨格標本の話)し、
現実と空想との間を行き来しながら作家が小説を編み上げる、その舞台裏として読んでみてもまた違った楽しみがありました。

/「骨の記憶」藤原智美

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