快読日記

日々の読書記録

「I'm sorry,mama.」桐野夏生

2011年04月23日 | 日本の小説
《4/22読了 集英社 2004年刊 【日本の小説】 きりの・なつお(1951~)》

とにかく、いい人が全然出てこない上に、主人公のアイ子というのも人間としての美点が全く見当たらない女です。すごいよね。
ヌカルミハウスと呼ばれる置屋で生まれ育ち、父親はもちろん母が誰かもわからないまま、戸籍もなく、犬のように育ったアイ子。
こういう人物を描ける作家自身にも興味が湧いてきます。

様々なエピソードに登場する人物も全て生臭くて、グロくて、そして鮮やか(キラキラじゃなくてギラギラ)でした。
桐野夏生作品って、しばしばそのオチが話題になりますよね。
「OUT」しかり、「東京島」しかり。
読者によっては釈然としないラストになることも多いみたいですが(わたしは今のところ、感じたことがありませんが)、
今回思ったのは“桐野夏生はストーリーテラーというより、エピソード巧者なんだ”ということです。
だから、エンディングに多少説得力や整合性がなくてちょっと失望させられたとしても、
充分それ以上のおもしろい場面を読んできたんだからいいじゃないか、と肩を持ちたい気分です。

あと、かなり黒くて、タールのように重いけど、笑いのセンスも抜群だと思いました。
例えば双子のおじさん「信男と頼男」なんて気持ち悪くて絶妙です。

→「東京島」桐野夏生

/「I'm sorry, mama.」桐野夏生
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