快読日記

日々の読書記録

「萩尾望都作品集 なのはな」萩尾望都

2012年04月09日 | 漫画とそれに関するもの
《4/6読了 小学館 2012年刊 【漫画 作品集】 はぎお・もと》

収録作品:なのはな/プルート夫人/雨の夜-ウラノス伯爵-/サロメ20××/なのはな-幻想『銀河鉄道の夜』

「なのはな」とその続編「なのはな-幻想」は、原発事故後の福島の話。
絶望的な話にはすまい、と作者が意図すればするほど、その透明度の高い明るさが目にしみて余計に悲しくなります。
その2つの間に収められている「プルート」「雨の夜」「サロメ」の3部作は、放射性物質と人間との関係を描いた寓話。
プルトニウムとウランの擬人化された姿はそれはそれは美しくて、だから怖いです。

人間に富を約束し、さらなる欲望をかき立てる彼らは華やかで蠱惑的な西洋人の姿で現れます。
対して、「なのはな-幻想」には仏が登場するのというのがとても象徴的。
果てしない欲望が、人間を苦しめ身を滅ぼす原因になるのだとすれば、
その欲をゼロに近づければ救われるんじゃないか。
そのために有効な方法は、欲を満たすことではない。
だって、欲が完全に満たされるなんてことはありえないから。
そうではなくて、“少欲知足”(欲望を少なくし、「これで充分だ」と知ること)しかないわけだ。
わたしたちに“未来”があるとしたら、そこらへんに入り口がありそうだ。
…っていうようなことをぼんやり思いました。うまく言えないけど。

/「萩尾望都作品集 なのはな」萩尾望都
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