快読日記

日々の読書記録

「猫」ジョルジュ・シムノン

2009年01月14日 | 翻訳小説
《1/13読了 三輪秀彦/訳 創元推理文庫(東京創元社) 1985年刊 【翻訳小説 フランス】 原題「LE Chat」(1967) Georges Simenon》

再婚同士の70代の男女。
編み物をする妻の膝に、夫が飛ばした小さな紙片には「ネコ」とだけ書かれています。
妻は無言で、剥製になったおうむをじっと見つめる。
妻が夫の猫を毒殺し、仕返しに夫が妻のおうむの羽をむしって殺してから4年。
一切の会話をやめて、憎みあう話です。

って聞くと暗いですよね~。
たしかに暗い。
20年も前に買ったこの本を年末に発掘し、ちょっと興奮しながら読みました。

話は夫の目線から展開します。
妻が、夫の考えや心情をあたかも完全に読んでいるように見える一方、
夫には妻が何を考えているのか全くつかめません。
女はお見通しのフリをして、男は分からない分からないと恐れるだけ。
そもそも女が本当に分かっているのかだって、男には分からない。

む~。難しい。
「男女の話」に「+老い」とくると、わたしの想像力では太刀打ちできず。
でもけっこう好きですこういうの。
そのうつうつとした雰囲気や焦燥感がたまらない1冊。
実際の70代の感想が聞きたいところです。

あと夫が、妻と死別した前妻と「母親」を同列に考えるのがちょっと嫌でした(笑)