快読日記

日々の読書記録

「ソロモンの偽証 第Ⅲ部 法廷」宮部みゆき

2012年12月28日 | 日本の小説
《12/25読了 新潮社 2012年刊 【日本の小説】 みやべ・みゆき(1960~)》

展開がダイナミックで、読みながらダレるところが一つもありませんでした。
ちょっと長くなるとすぐ挫折するわたしをして、です。
さらにそこに現実感と説得力を与えているのが、無数の小さいエピソード。これがまた絶妙でリアル。

読み終えて確信するのは、この作品、無駄な要素が全くないんだってことです。
すごすぎる。
バブル崩壊直前の日本に設定したのにも大きな意味があるし、
主人公は小学生でも高校生でもなく中学生でなければならなかった。
ミステリであるのと同時に、14歳という特殊な季節を残酷に描き出した話であり、
さまざまな家族の形を見せ、さまざまな“子供”“大人”の姿を提示し、子供から大人に脱皮する途中で苦しんでいる若者も登場する。

視点と意味の多重性がこの小説の魅力だと思います。
どんな年齢や立場の読者にとっても身につまされるところがあるんじゃないか。
宮部みゆきの信頼できるところはここですね。
どんな人間も多面体であり、それぞれ汲むべき事情を抱え、同情の余地がある、そこに「そうだよね」と言って寄り添える(優しさというより)強さがあるのがこの作家の凄さ。
マスコミの人間はこう、中学生はこう、学校の先生はこう、っていう決めつけがないから、基本的なトーンが明るくていい。

わたしは他の本を挟んでクールダウンしながら読みましたが、一気読み!という人の気持ちもよく分かる、傑作だと思いました。
映像化されるのかなあ。
質量ともにこれだけの厚みがある作品を2時間や3時間にまとめちゃうのはやめて欲しいなあ、でも涼子のパパは伊原剛志でお願いしたいわ。
第Ⅲ部だけを舞台化ってのも悪くないけど、“中学生”という設定だけは守ってもらいたい、そういえば、楳図かずお「漂流教室」を高校生でドラマ化、という愚行がかつてあったなあ…などと、思いは枯れ野を駆けめぐるのでありました。

登場人物たちをピックアップしてスピンオフ小説もいいですね。ヤマシンとか井上くんとかね。


→「ソロモンの偽証 第Ⅰ部 事件」宮部みゆき

→「ソロモンの偽証 第Ⅱ部 決意」宮部みゆき


/「ソロモンの偽証 第Ⅲ部 法廷」宮部みゆき
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