快読日記

日々の読書記録

「赤めだか」立川談春

2012年02月19日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《2/17読了 扶桑社 2008年刊 【日本のエッセイ】 たてかわ・だんしゅん(1966~)》

後の談春少年が立川流に入門するところから真打ち昇進までの話。
すごくいいとは聞いていたけど、期待以上です。

まず、語り口がいい。
テンポがよくて淀みがなくてグイグイくる。
そして、熱い男・文字助、頼れる兄弟子・志の輔、デキる弟弟子・志らく、魚河岸の夫婦、去っていった兄弟弟子など、登場人物がみんな魅力的に描かれています。
もちろん一番引きつけられるのは家元・談志です。
芸を仕込んでくれる師匠と盗めと言う師匠、違いは何か。
「型破り」は「型なし」とどう違うか。
そして「嫉妬」とは何か。
まるで談志名言集です。
談春がいかに家元に惚れていたか、そして、家元がどれだけ弟子たちを愛したかがよく伝わります。
本文にもあるように、師弟関係というのは恋愛関係に酷似している。
そう思いながら読み進めて、最後に「小さん・談志」というもう一組の師弟の、決して他人にはわからない深い関係の一端に触れ、ハッとさせられます。

本当に評判どおりの名著です。
すごくおもしろいものを読んでいるときって、仕事中も入浴中も運転中もずーっと続きが読みたくてむずむずしますよね。
じゃあ読んでる最中は幸せかというとそうでもなく、「あー! 読み終わりたくないよお!」とか嘆いているんだから勝手なもんです。
久しぶりにそういうジレンマに陥った本でした。
この本、家元は読んだのかな。

/「赤めだか」立川談春
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