快読日記

日々の読書記録

「小川洋子の偏愛短篇箱」小川洋子 編著

2012年09月22日 | 日本の小説
《9/22読了 河出文庫 2012年刊(2009年河出書房新社から刊行された単行本を文庫化) 【日本の小説 アンソロジー】 おがわ・ようこ(1962~)》

収録作品:「件」内田百ケン/「押し絵と旅する男」江戸川乱歩/「こおろぎ嬢」尾崎翠/「兎」金井美恵子/「風媒結婚」牧野信一/「過酸化マンガン水の夢」谷崎潤一郎/「花ある写真」川端康成/「春は馬車に乗って」横光利一/「二人の天使」森茉莉/「藪塚ヘビセンター」武田百合子/「彼の父は私の父の父」島尾伸三/「耳」向田邦子/「みのむし」三浦哲郎/「力道山の弟」宮本輝/「雪の降るまで」田辺聖子/「お供え」吉田知子

アンソロジーって、未読の作家の味見ができるから好きなんですが、こんなにおもしろいのはなかなかないです。
初めて読んだ作品の中で特に印象深いのは「兎」「過酸化マンガン水の夢」「みのむし」「雪の降るまで」。
金井美恵子って、もっと若い頃に読んでたらものすごくハマっただろうなあ、危ない危ない。
(今からでもハマりそうで怖い)
「過酸化-」は、清水義範の名言「谷崎は変態なのに悩まない」を地で行くかんじ、いや、それを遥かに超えるおもしろさにグラグラきました。
だって、赤い過酸化マンガン水ってのは………(これから読む人のために伏せ字)のことなんですよ。
やっぱこのおじさん、頭がおかしいわ~。好きだ~。
「みのむし」は職場の空き時間に読んでしまって、そのあとの仕事に支障が出ました。
「雪の-」は、ちょっと秘密にしたい作品です。
なんにも生まずにただ燃え尽きるって、女の、ある種の理想なのかもしれません。
よくわからないけど。

ラストの「お供え」は吉田知子の短編集で既に読んでるんですが、何度読んでも怖い。胸の奧がぞわぞわする。傑作。
他に既読だったのは「押し絵-」と「春は-」。
20年ぶり(!)に読んだ「春は-」は、全く印象が違っていてびっくりしたのに対して、「押し絵-」は初めて読んだ中学時代とおんなじ感覚がぐわ~っと蘇ってきて、
いずれにしても、文学の力っていまさらながらすごいのね、と再確認しました。

ひとつひとつの作品のあとに小川洋子が短くつけたエッセイもよかったです。
特に、尾崎翠に寄せた話にじ~んときた。

この本、結局3ヵ月近くかけました。
だって、読み終わりたくなかったんだもん。
“珠玉”って言葉はこういう短編集にしか使って欲しくないですね。

/「小川洋子の偏愛短篇箱」小川洋子 編著
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