快読日記

日々の読書記録

「骨董掘り出し人生」中島誠之助

2008年09月23日 | エッセイ・自叙伝・手記・紀行
《9/22読了 朝日新書 2007年刊 【日本のエッセイ 自叙伝】 なかじま・せいのすけ(1938~)》

骨董品はそれぞれ歴史を持っていますが、中島誠之助はそれを「時間に人と物とが絡んで今まで続くもの」と捉えています。
「いい仕事してますね~」という決めセリフが象徴するとおり、モノの向こうに人を見ているのです。
趣味である登山では、人跡未踏の地より、人の生活の匂いのする山が好きだというのもうなずけます。

この本は、1歳のときに両親を病で失うという人生のスタートから、「骨董からくさ」をたたんで現在に至るまでの修業記です。
お金に対する考え方や、人の心の解釈、世間との関わり方、2足のわらじを履かない姿勢、本物とは何か、商売とは何かなどなど、「はー」とか「へえ~」とか唸りっぱなしの読書でした。

この1年で、中島誠之助の本を読むのは3冊目ですが、改めてその魅力を考ると、「品性と野性」を併せ持つところかなあ、と思うんです。
骨董品を静かに愛でる姿と、玄人同士の熾烈な駆け引きや騙し合いはいまいち重なりません。
若い頃、半年ほどですが、マグロ漁船に乗ったというのも、今のシュッとした雰囲気からは想像しにくいですよね。
でも、そここそが中島誠之助のおもしろさであり魅力なんです。