快読日記

日々の読書記録

「猫鳴り」沼田まほかる

2008年04月06日 | 日本の小説
《この結露感はクセになります》





プロフィールの「元・僧侶」が気になる沼田まほかるの3作目です。
前2作はたぶんミステリに分類されるんだけど、「もうそういう仕掛けとかオチはいいからじっくり小説を書いてほしいなあ」と思ってたところにこの新作です。
待ってました。


物語は、3章に分かれ、1匹の猫が軸になっています。

まずやられたのがこの湿度の高さです。
それから、執念深いとも言える濃厚な心理描写。
人の家の匂いを思いがけず嗅いでしまったような気まずさを感じます。
だから主人公夫妻に読者として感じる距離感はハンパなく近いです、戸惑うくらい。
こんな感情を突き付けられ、ものすごく動揺しました。
他人の目には生涯決して触れることがない部分を静かに見つめたような読書でした。

■2007/12/13読了 双葉社【日本の小説】