快読日記

日々の読書記録

「トーベ・ヤンソン短篇集」トーベ・ヤンソン

2008年09月18日 | 翻訳小説
《9/16読了 冨原眞弓/編・訳 ちくま文庫 2005年刊
(「トーベ・ヤンソン・コレクション」(全8冊 筑摩書房)からセレクトされた、ちくま文庫オリジナル編集)
【翻訳小説 短編集 フィンランド】 トーベ・ヤンソン(1914~2001)》

ヤンソン作品、ムーミンは何度も脱落したわたし(唯一最後まで読めたのが「ムーミン谷の名言集」というダメっぷり)ですが、非ムーミンはかなりいけました。

でも、これはいわゆるキラキラした珠玉の短編集という風情ではなく、
水彩絵の具を幾重にも重ねた鈍い透明感を持ちながら、一つひとつに重量がある、
うまく言えないけど、なんか小腸みたいなかんじです。
手のひらで受け止められるくらい小さいのに、丁寧に広げてみると新聞紙だかテニスコートだかの広さがあるという。
新聞紙とテニスコートではえらい違いですね、適当なこと言ってすみません、えへへ。

スケッチみたいに一場面をサクッと切り取った短編もいいけど、
人生を小さく小さく折り畳んだこういうのも、高密度で味わいが豊かです。

ここに登場する癇の強い小さな女の子も、自分の内側にじっと耳をすますおばあさんも、時間の感覚が狂った人も、泊まるホテルの名前を思い出せないおじいさんも、みんなズッシリと体重を持ってます。