快読日記

日々の読書記録

「身もフタもない日本文学史」清水義範

2010年04月20日 | 言語・文芸評論・古典・詩歌
《4/19読了 PHP新書 2009年刊 【文学史】 しみず・よしのり(1947~)》

まず、女性が書くエッセイはもれなく清少納言のようなセンス自慢に陥り、男性は知性を自慢し、世の中を叱る兼好になってしまう、という指摘からするどいっ!
自慢の仕方が巧みかストレートかの違いこそあれ、エッセイとはつまるところ「自慢芸」だ、という断言にも大きくうなずきました。

他にも、源氏物語が世界的に見てどんだけすごいか、西鶴や近松といった近世の作家の素晴らしさなど、すんごくおもしろい国語の先生の話(暴走ぎみ)を聞いているようです。

特に爽快なのは近代文学史。
漱石の偉大さを讃えたかと思えば、自然主義や白樺派の作家をひとまとめにして「みんな自分にしか興味がない(171p)」と言い切る小気味良さ。
実篤の作品を「一人よがりの真面目小説(179p)」、小説の神様・志賀直哉の「暗夜行路」も「主人公に魅力がなく、根底に優越感を持っている男の苦悩には説得力がなく、物語は論理的構造を持っていない(180p)」とバッサリです。
一番笑い、かつ感心した名言は「谷崎は変態なのに悩まない(184p)」。
今気付いたけど、これ五七五になってる!

この本の効能は"名作が怖くなくなること"。
鴎外作品を「あまり面白くな(172p)」いと言い切ってもいいのね(笑)というかんじです。