快読日記

日々の読書記録

「ちあきなおみに会いたい。」石田伸也

2012年05月27日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《5/24読了 徳間文庫 2012年刊(「ちあきなおみ 喝采、蘇る」(徳間書店 2008年刊)に加筆修正・改題)【ノンフィクション ちあきなおみ】 いしだ・しんや(1961~)》

ちあきなおみはなぜ歌わなくなったのか。
わずか4歳での舞台生活のスタートから、メジャーデビュー、その後の華々しい活躍といくつかの誤解やトラブル、夫の死、活動停止、そしてわずかに伝わる近況までを追ったノンフィクション。

すごくおもしろかった分、物足りなさもありました(もっと書いてほしいという意味の)。
例えば、ステージママの母親や、「カナリア姉妹」として歌手活動をしていた二人の姉は、冒頭にちょっと話題になるだけなのですごく気になるし、父親に関する記述に至っては皆無だし、ちあき作品の分析や歌唱への評価ももっと欲しかった。

わたしみたいなリアルタイムで聴いていないファン(CD10枚組BOX「うたくらべ」が家宝です)には「ちあきなおみ入門」としてちょうどいいのかもしれません。
でも、もっとねちっこく取材してもらって、この3倍の厚さがあってもいいなあ。読むのになあ。

印象に残るエピソードはたくさんありました。
13歳のとき、こまどり姉妹一座に前座歌手として所属していたそうです。
よほど嫌な目に遭ったようで、後にブレイクしてコロンビアの廊下で姉妹と再会したときには目も合わせようとしなかった。
そんな素敵な証言をサラッとする姉妹にも俄然興味がわきました。
一座をやめた後、10代半ばで、たった一人でクラブまわりをしていたというのも。
10歳の頃から一人暮らしをさせられていたという小林幸子もそうですが、子供に対する扱いが苛酷すぎる。


そして、これだけの声と容貌に恵まれ、歌唱力や表現力を持つ人が、夫が亡くなったからという理由だけで、スパッと舞台から降りてしまったのがやっぱり謎です。
本書でもいうように、美空ひばりは母を亡くし、弟たちの引き起こすトラブルに悩まされ、さらに彼らにも先立たれて、それでも(だからこそ)歌い続けたのに。
ちあきなおみはいったい何を求めていたんだろう。
尋ねてみたいけど、謎は謎のままです。


しかし、どうやら彼女は消息不明なんかではなく、何か確実なきっかけがあれば復帰も夢じゃない雰囲気みたい。
今年65歳。
由紀さおりがあんなに活躍してるんだから、ちあきなおみにももう一度、舞台に立ってほしいものです。

/「ちあきなおみに会いたい。」石田伸也
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