快読日記

日々の読書記録

「人が見たら蛙に化(な)れ」村田喜代子

2009年01月10日 | 日本の小説
《1/7読了 朝日新聞社 2001年刊 【日本の小説】 むらた・きよこ(1945~)》

「人が見たら蛙に化れ」とは、素晴らしい骨董品に対して投げ掛けられる言葉。
そんなお宝に魅入られた3組の男女の話です。

土中に埋もれた古窯跡や、年寄りが亡くなったばかりの旧家などから、様々な美術品が顔を出す場面に何度もぞくりとさせられます。
美とは何だろう、そしてそれに憑かれる人間って何だろう、と考えながらページを繰り、
国内外を飛び回る彼らと一緒にハラハラおろおろしているうちに、見事としか言い様のない結末を迎えます。

いやあ、2009年のベストは決まりかも。
まだ正月だけど。

お茶をテーマにした「雲南の妻」もそうですが、村田喜代子作品って、モチーフと人物の組み合わせが本当に絶妙で、気持ち悪くなるほど生々しい。
この「人が見たら」は骨董品と女がどちらも不可思議かつ逆らえない魅力を持つものとして、終始男性目線で描かれているのがとてもおもしろかったです。
展開が意外と速いので、ボリュームは気になりませんでした。