快読日記

日々の読書記録

「完本・美空ひばり」竹中労

2012年11月15日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《11/11読了 ちくま文庫 2005年刊 【ノンフィクション】 たけなか・ろう(1930~1991)》

評伝を読むのが大好きなんですが、たまにハズレを引くことがあります。
わたしにとってハズレだ!と思うのは、書き手の対象への思い入れが感じられないもの。
その上、暴露してやる!という悪意があったら最悪です。
たとえ世間の評判が悪い人であれ何であれ、そこは多角的に取材して、知られざる魅力(それが「悪の魅力」であっても)に触れてくれたりしたら傑作だなあとうれしくなるわけです。
そういう熱みたいなのが伝わらない評伝は結局投げ出してしまう。

そこで、竹中労のひばり伝です。
松岡正剛が「この本を読むと多くの芸能ルポは本当につまらない」と評するのもよくわかる、傑作かつ力作、つまり名作。
もっと早く読めばよかった。
ルポやひばり本人の手記、日本の戦中・戦後史の中の“民衆の歌い手”としてのひばり分析、筆者とひばり母娘との関わりなど、活きがいい文体も好みです。
竹中労本人の魅力とあいまって、「人が人を書くことの意味って何だろう」と考えましたが、そんな難しいことがわかるわけない。

それはともかく、
こういう“惚れて書いたもの”しか読みたくない、っていうか読めないなあ、とつくづく思います。
竹中労がひばりちゃん側に立つあまり、小林旭が悪役になっちゃってちょっと気の毒ですが。

/「完本・美空ひばり」竹中労
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