快読日記

日々の読書記録

「柔らかな犀の角 山努の読書日記」山努

2012年08月07日 | 総記・書評・人生訓・哲学・宗教など
《8/5読了 文藝春秋 2012年刊 【書評 随筆】 やまざき・つとむ(1936~)》

俳優の書評といえばまず児玉清が思い浮かびます。
鑑賞上手で博識で目利きの児玉本は、例えば陶磁器を見てじっくり味わい、評価し、その勘所をピタッと見据えているようで、批評は聡明そのもの。
対して山努は、その器に食べ物をガバッと乗せてむしゃむしゃ食って使ってみて、ああ、いい器だとかつぶやいているような。
ますます好きになっちゃいますね。

山本で特におもしろかったのは、映画や演技に関する本を読んだときの俳優ならではの感想です。
本に登場する人物に対して“演じてみたい”と反応することもあって、でもそれが女性だったりして。
そこで、意外とすんなりできそうだと思わせるところが名優山努です。

お気に入りは池澤夏樹、画家の熊谷守一、佐野洋子、鶴見俊輔や梅棹忠夫、穂村弘まで幅広く、ジャンルも小説、科学、映画、随筆、ノンフィクション、写真集となんでもなかんじです。

それはそうと、山努はもう76歳(!)らしいです 。
おじいさん臭さが全然ないのはなぜ?
むしろ、男の子くさい。
若々しいというのとはちょっと違います。
「どんぶらこ」という言葉が好きだというように、加齢に逆らったり無理したりしていない。
しかし、その感性や好奇心はみずみずしく、言葉は飾り気がなくて率直。

「この間、石井琢朗の雄姿が久しぶりにテレビに映った。立ち上り、応援のつもりで素振りのマネをしたら関節が外れそうになった。」(226p)

「『バカなのかも?』はストライク。この人バカなんだ、と無視されては元も子もない、バカなのかも? がミソなので、その按配が厄介、綱渡りなのだ。本気でものを創る人は皆その危険を冒している。この人、バカなのかも? 今後もこれでいこう。」(284p)

/「柔らかな犀の角」山努
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