快読日記

日々の読書記録

「スタッキング可能」松田青子

2013年04月17日 | 日本の小説
《4/13読了 河出書房新社 2013年刊 【日本の小説 短編集】 まつだ・あおこ(1979~)》

収録作品:スタッキング可能/ウォータープルーフ嘘ばっかり!/マーガレットは植える/ウォータープルーフ嘘ばっかり!/もうすぐ結婚する女/ウォータープルーフ嘘ばっかりじゃない!

岸本佐知子がおもしろいって推すなら読まねばなるまい!
…って判断は大正解。
なんか最初は、おしゃれで頭よくて、仲良くなれないタイプかなあと恐る恐る読み始めたんですが、気がついたらクスクス笑いが止まらなくなっていました。

表題作は、あるビルのいくつものフロアで働く人々の話。
彼らはまさにスタッキング可能というくらいみんな似ていて、そして、それぞれが孤独。
自分たちに媚びない女をレズビアンと認定するレズビアン会議で憂さ晴らしする男。
全身毛むくじゃらで、オフィスのポストイットやお菓子のくずをその体毛に絡めて歩くチームリーダー。

「部署が違って、メンバーが違ったって、何千人と人がいたって、どの階でも同じようなことが話されていて、行われている。構成要素だいたい同じ。もっと引いたら、この街の中、会社が何百あったって、上記のごとくだいたい同じ。引けば引くほどD山の気持ちは落ち着いていく」(51p)

「ねえ、私たち隠せてるのかな、本当に、ちゃんと隠せてるのかなあ、いろんなこと。なんで隠さないといけないんだろうね」(72p)

「こんなにみんな同じだと思わなかった」(46p)

トイレに置いてあったポーチからリップだけが盗まれたときの派遣社員女子の心細さには共感しました。
そう。働いてる人なら誰でもどこかに共感できる、それが小さいことであればあるほどピタッとわかる、そんな気がします。

「マーガレットは植える」は岸本佐知子が翻訳する変わった味の小説と同じ匂いがする。

その違和感や不思議な居心地悪さといったディテールと、スライドし続ける景色がおもしろい「もうすぐ結婚する女」は、なんだか胸がザワザワします。

「ウォータープルーフ嘘ばっかり!」は、女二人組「ちふれ」の語り。
「嘘ばっかり!嘘ばっかり!ウォータープルーフ嘘ばっかり!」って一緒に声に出すと楽しさ倍増です。お試しあれ。

/「スタッキング可能」松田青子