快読日記

日々の読書記録

「犯罪」フェルディナント・フォン・シーラッハ

2012年05月01日 | 翻訳小説
《5/1読了 酒寄進一/訳 東京創元社 2011年刊 【翻訳小説 短編集 ドイツ】 Ferdinand von Schirach(1964~)》

収録作品:フェーナー氏/タナタ氏の茶わん/チェロ/ハリネズミ/幸運/サマータイム/正当防衛/緑/棘/愛情/エチオピアの男

とにかくおもしろい!
今年のうちに第2短編集「罪」が出るそうで、今から楽しみです。
ちなみに第3作は初の長編、らしい。

※ 第2短編集、もう出てました。しかも2月に。
  タイトルは「罪悪」。


話を戻すと、
タイトル通り、11の短編はすべて「犯罪」がモチーフになってはいるけど、内容は多岐にわたっています。

息が止まってしまうような深い悲しみに思わず眼を閉じた話。
人の一生を窓の向こうから静かに覗いたような話。
あまりに簡潔で的確な暴力描写のせいで心拍数が急上昇したり、
リアルな謎解きものにスッキリしたり。
かと思えば、犯罪者一家に明晰な頭脳を持って生まれた男が驚くべき方法で兄弟を助ける話に興奮し、
博物館の一つの部屋に、しかも展示内容もずっとそのままの部屋に、23年間警備員として勤めた男と一緒に気が狂いそうになる。
謎を残してほったらかされる快感(変態か)に酔いしれる作品もあって。
そして最後の「エチオピアの男」には泣かされそうになりました。
(泣かなかったけど。感心しすぎて。)

随所に現れる弁護士の「私」がストーリーをほとんど動かさないところも非常に現実的で、だから余計に引き込まれます。

一気読みはもったいない。
1日1編、ワクワクしながら読むことをおすすめしたい。

/「犯罪」フェルディナント・フォン・シーラッハ
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