快読日記

日々の読書記録

「死刑でいいです―孤立が生んだ二つの殺人」池谷孝司/編著

2010年01月18日 | ノンフィクション・社会・事件・評伝
《1/7読了 池谷孝司/真下周 著  共同通信社 2009年刊 【社会 犯罪 少年】 いけたに・たかし/ましも・ひろし 》

山地悠紀夫。
2000年、16歳で母親を殺し、少年院を出た2年後の2005年には、面識のない27歳と19歳の姉妹を刺殺して、昨年2009年の夏、死刑が執行されました。

この事件は、児童虐待、少年法の是非、少年院の矯正教育について、発達障害の患者が引き起こした事件であるということ、死刑を望む人間を処刑することの意味、などなど、さまざまなテーマを孕んでいます。
そんな中でも本書は、従来のものとは大きく違うんです。
今までのこの手の本は、「こんなモンスターがいますよ」的な内容が多く、筆者の視点も批判的か同情的かの違いしかなかったような気がします。
いや、本書を読んだあとではそう思わざるを得ない。

この2人の筆者は、山地の周囲の人々や専門家を徹底的に取材し、「彼とどう関わったか」「どうすればよかったのか」「今後どう支援していったらよいか」を誠実に考察・提案しています。
発達障害を抱える人がみんな犯罪者になるわけではもちろんありません。
しかし、彼らが「孤独」に蝕まれたとき、最悪の事態を招くおそれがあり、
それを防ぐ手段をなんとか模索していこう――そんな作りの本になっています。