快読日記

日々の読書記録

「東京島」桐野夏生

2010年08月10日 | 日本の小説
《8/8読了 新潮文庫 2010年刊(2008年に新潮社から刊行された単行本を文庫化) 【日本の小説】 きりの・なつお(1951~)》

舞台は無人島。
40代半ばの清子以外、数十人の漂流者は全員男性、という設定の桐野ワールド。
…と聞くと、なんだか「新潮45」みたいな、ドロドロした話を想像してしまいます。
ところが、清子以上におもしろく描かれているのがワタナベ・ユタカ・マンタさんなどの男たちだったり、コロコロ転がる話の展開そのものがスリリングだったりするので、
まさに「予想を裏切り、期待は裏切らない」1冊でした。

桐野夏生はいつも、「人間を丸裸にしたらこんなだよ」ってところを意地悪な視線でチクチクと書きますが、
この「東京島」はそこに「慈愛の目」が加わっていて、なんだかふくよかになったような気がします。
それから、「OUT」のころは、猛烈にガンガン書き進んで燃料が尽きたところで唐突に終わった、って印象だったけど、本作は過不足なく収束し、しかも余韻が残る絶妙な終わり方でした。

夏休みの読書にぴったりな海モノとして中高生に勧めたいところです。
賞状もらえないだろうけど。