快読日記

日々の読書記録

「ぴんぞろ」戌井昭人

2011年10月22日 | 日本の小説
《10/22読了 講談社 2011年刊 【日本の小説 短編集】 いぬい・あきと(1971~)》

収録作品:ぴんぞろ/ぐらぐら一二

またいい作家みつけちゃったよー!というのが感想。

主人公「おれ」が、知り合いの男のイカサマ賭博に巻き込まれるところから、それこそサイコロのようにコロコロと転がっていく「ぴんぞろ」。
この“転がっていく感”は、無駄や違和感が全然ない巧みな言葉遣いのなせる業で、
うまいピアニストの演奏ほど、テクニックを気にせず曲に集中して聴ける、という話を地で行くかんじ。
浅草の猥雑な雰囲気や、田舎の温泉場での魅惑のショーの描写など、なんだかワクワクします。
作者は劇団で脚本を書いたり出演したりしているそうで、
だからなのか何なのか、人物のセリフがまたいいかんじに脱力系で絶妙。

ふたつめの「ぐらぐら一二」は、事故によって指を失った男が海辺の温泉場に行く話。
どちらもコロコロ転がる展開と、とぼけた味がある会話と、なぜか動物(猿とか犬とか)の存在がピリッと効いていて、大満足。

そういえば、2作とも寂れた温泉場が出てきます。
うっすら悲しげで、滑稽で、切なくて、この人の小説の舞台にぴったりな気がします。

/「ぴんぞろ」戌井昭人
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