快読日記

日々の読書記録

「吉田知子選集i 脳天壊了」吉田知子

2013年07月14日 | 日本の小説
《6/29読了 景文館書店 2012年刊 【日本の小説 短編集】 よしだ・ともこ(1934~)》

収録作品:脳天壊了/ニュージーランド/乞食谷/寓話/東堂のこと/お供え/常寒山

「お供え」以外はすべて初読みという幸甚。
今回の選集刊行を受けて、ネットで短いインタビューが読めて、わずかであっても近況も伝わり、久しぶりに喜びでドキドキしてしまいました。
なんだろうこのおもしろさ、そして怖さ。
吉田知子の怖さって、“悪夢の怖さ”ですね。
特に「ニュージーランド」は、吸い込まれるような絶望感、もう二度とここから抜け出せないっていう恐怖でビクビクしながら読みました。
しかも、いつこの悪夢が始まったのか、どこが悪夢の入り口だったのかすらわからない。
気がついたときには悪夢に閉じ込められて身動きがとれなくなってる。
「お供え」もそうだし「乞食谷」「常寒山」もそうかな。
インタビューで「お供え」について“自宅の隣の敷地で地鎮祭をやってるのを見たのがきっかけ”と答えていました。
そう思って読み返すとまたちょっと違ったかんじがします。
隠し味を知った後で、もう一度食べてみるような楽しみ。

「寓話」「東堂」といったあらすじみたいに無愛想な文体で書かれたものも独特の雰囲気があって、クセになる。

「常寒山」は単行本初収録。
普段見慣れたはずのものが、気がつくと正体不明で不気味な異世界のものになっている。

悪夢の途中に置き去りにされるような読後感がたまらないっす。

巻末の、町田康による「脳天壊了」を国語の問題に出すとしたら、という設定の解説(?)を補助線にしてもう一度「脳天」を読むと一段と効きますよ!

この選集、全3巻の予定だそうです。
装幀もかっこいい。
なんか、生きる楽しみが増えたかも。

「吉田知子選集Ⅱ 日常的隣人」吉田知子

/「吉田知子選集Ⅰ 脳天壊了」吉田知子