快読日記

日々の読書記録

「仮想儀礼 下」篠田節子

2013年08月17日 | 日本の小説
《8/16読了 新潮社 2008年刊 【日本の小説】 しのだ・せつこ(1955~)》

.....内容を予想させる表現があります.............










上巻の事件だけでも腹一杯、この下巻の始めあたりでそれらがだいたい収まるんです。
そのとき“下巻まだほとんど残ってるよ~。もう満足なんだけど”と思ったわたしが甘かった。
本作の真価はこの下巻にありました。
今までの話は壮大な伏線だ。
あんまり書いちゃうといけないので、とりあえず帯のコピーを引用すると「狂信が常識を食い破る」です。

まさに“食い破る”瞬間が見えました。
世俗を否定し、信仰を追求すれば、必ず世の中から逸脱する。
その状態が世間から見れば「狂気」「狂信」であり、どんな宗教だってとことんいけば「狂」につながるわけです。
この作品で圧倒されるのは、「狂」の凄まじい遠心力をしっかり制御している作家の厳しさと力量。
神がかりなところまで行っちゃって、ミイラ捕りがミイラ的な教祖誕生話で終わるのかと思いきや、冷徹なまでに人間の話に着地しています。
神仏も超常現象も暴力も罪も狂気も、ひとりひとりの中にこそある、その人間を徹底的にひん剥いて丸裸にしてガリガリと書いた結果が、この傑作です。

/「仮想儀礼 下」篠田節子