快読日記

日々の読書記録

「繁栄の昭和」筒井康隆

2014年11月06日 | 日本の小説
《10/24読了 文藝春秋 2014年刊 【日本の小説 短編集】 つつい・やすたか(1934~)》

収録作品:繁栄の昭和/大盗庶幾/科学探偵帆村/リア王/一族散らし語り/役割演技/メタノワール/つばくろ会からまいりました/横領/コント二題/附・高清子とその時代

筒井康隆が天才なのはもういいとして、
80歳を迎えたベテラン作家の新作が、誰よりもパワフルでおもしろくてチャーミングってのはどういうこと?
人間って80でもまだ伸びるの?
いや、人間がすごいんじゃなくて筒井康隆がすごいのか。たぶんそうだ。
例えば、表題作だって、一見端正な古めかしい昭和の文豪風に始まって、気づいたときにはしてやられてる快感。
じじいのふりもうまい。
収められた短編すべてが違うパターンってのもにくい。

この人の作品を母語として読めるしあわせ。
ひとつひとつの作品は、それぞれにしかけがあって、わーとかおーとか言いながらただただ味わえばいいという至福。

そのしかけゆえに、内容に触れることはしませんが、「役割演技」に登場する「世界をまるごと書き尽したいという願望に捉われ」(129p)た小説家の言葉を引用しておわりにします。

「だって現実のこの世界にだってわたしの知らないことはいっぱいある。わたしの国や、あなたのいるこの国も含めてですが、現実というのは、わたしの知っているこの世界だけではないんじゃないか。そんな気もするんですよ」(130p)

筒井康隆ってあんまり読んだことないって人にもおすすめしたいです。

/「繁栄の昭和」筒井康隆