快読日記

日々の読書記録

「更年期少女」真梨幸子

2010年12月12日 | 日本の小説
《12/12読了 幻冬舎 2010年刊 【日本の小説】 まり・ゆきこ(1964~)》

Nっちゃんのご紹介本。

昭和51年に発表された「青い瞳のジャンヌ」という少女漫画がありました(架空だけど)。
三十数年たった今、そのファンクラブがありまして、その幹事スタッフ「青い六人会」のメンバーたちが次々と悲劇に襲われて…という話。

読む前に覗いたネット書評では「女オタク」「おばヲタ」心理を巧みに描いてる、なんて言われてたけど、なんだか違うみたい。
彼女らはオタクというより「熱心なファン」だし、
ここに生々しく展開しているのはオタクやファンの心理より、普通の40・50代女性たちの出口なしの不安と焦躁・絶望でした。

何もかもがうまく行かない。
いつからこうなったんだろう。
こんなはずじゃなかった。
でも、ずーっっと遡れば、幸せな時代だってあった。
「青い瞳のジャンヌ」の連載を毎回楽しみにしていた少女のころだ。
悪臭を放つ現実にしばらく蓋をして、あのころの陶酔や情熱に淫したい。

とくに最初の「エミリー」の暴走するエピソードは痙攣的な黒いおもしろさ(そんなバカなと思いつつ笑ってしまう)。
「ミレーユ」の章では、自立できないまま50歳になろうとする娘に介護されるお母さんの静かな絶望がほとんど恐怖でした。

「新潮45」みたいなダークさと、暴発する下流っぷりには全盛期の戸梶圭太を連想します。
作者には、なんだか人間嫌いの匂いがするんだけど、もう1冊くらい読んでみたいかな。
松苗あけみの表紙も悪ふざけなかんじですてき。