快読日記

日々の読書記録

「地獄のアングル」永島勝司

2009年07月23日 | プロレス・相撲・ボクシングなど
《7/18読了 イースト・プレス 2005年刊 【プロレス】 ながしま・かつし(1943~)》

「プロレス地獄変」でも劇画化されていた長州力のプロレス団体WJ、その設立から崩壊まで約2年間の顛末記です。

この会社の滑稽なほどの杜撰さ、どこかで見たと思ったら、上杉隆「官邸崩壊」の安倍内閣にそっくりです。
スタート時がピークってとこも うり二つ。
そもそもプレイヤーと経営者は求められる資質がまるで違うんだから、長州は看板レスラーに、永島はしかけ屋に徹し、経営はプロを招いて金のことは任せちゃうってわけにはいかなかったのか――なんて言ってみたところであとの祭ですが。
一連の騒動の真相は藪の中で、関わった人それぞれに言い分があるのでしょう。
しかし見切り発車で、前につんのめるように始まった発足当初から、やることなすことすべてが裏目に出る様子はまるで何かの祟り。悲惨です。
選手を乗せた飛行機が、会場がある北海道上空まで来ながら天候のため着陸できずに羽田に引き返すあたりでは、笑いが込み上げるほどでした。
ものすごい運のなさです。
長州はこの後どうなってしまうんでしょう(;_;)元ファンクラブ会員としても心配なところです。

それにしても、やはり印象に残るのは猪木の存在。
要所要所に登場する猪木の魔性っぷりがたまりません。

結局この本は、周囲を翻弄する魔性の男・猪木に尽くして捨てられた(っていうか、愛されてなかった)傷心の永島が、新しい恋人・長州と手を取り合って小さなお店を開いたはいいけど、猪木の影を払拭できずにどつぼにはまって倒産した、みたいな話です。
永島氏は「俺と猪木は腐れ縁だ」なんて言うけど、賭けてもいい、猪木はそんなこと1ミリだって思っていない。
片思いだったんです。
今更ながら、猪木恐るべし。
なんだか分からないけど、猛毒の美味なんでしょう、きっと。
つまりこの本も猪木本かよ!というのが率直な感想です。