とだ九条の会blog

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田母神元空幕長問題の本質

2008年11月26日 | 国際・政治

田母神(たもがみ)俊雄元航空幕僚長が、いくら個人的論文として民間の懸賞論文に応募し、「日本が侵略国家だというのは正に濡れ衣」などという私的見解を表明しただけだといっても、応募した肩書きが現役の「防衛省航空幕僚長 空将」である以上、私たち国民としては大いなる危惧を感じざるを得ません。

さらに、その内容が、「(自衛隊は)集団的自衛権も行使できない、武器の使用も極めて制約が多い、また攻撃的兵器の保有も禁止されている」などという言葉をもって“雁字搦め(がんじがらめ)”だと不満を述べ、近現代の歴史を「見直す」としているのですから、それは「集団的自衛権を行使したい、武器も制約なく使用したい、攻撃的兵器も保有したい」というのが現役防衛省航空幕僚長の“本音”であると思うわけです。
結局のところ、これは近現代史議論などではなく、自衛隊を軍隊として質的強化を図りたいということなのです。

今回、特に重大な問題だと思うのは、政府が「憲法の枠内」としてきたことを超え、さらには日米安保の枠を超えてまで制服組トップが自衛隊としての質的強化を願っているということです。これでは文民統制(シビリアンコントロール)への重大な造反であり、「活字」の上といえども、組織だった取り組みが意識的に行われたのですから“自衛隊クーデター”と指摘される所以です。

田母神氏は「制約ばかり」と言いますが、これまで政府は、国民の合意をないがしろにし、自衛隊の海外派兵など「憲法の枠」を大きく逸出した憲法解釈でさまざまな既成事実を積み重ねてきました。
これに対し、自衛隊のイラク派遣を政府の憲法解釈の土俵をもってしても“違憲”だと断じたのが名古屋高裁の画期的判決でした。政府は「グー」の音も出なかったのです。
だからこそ、田母神氏は非常に痛いところを突かれたのか、この判決に対し「そんなの関係ねぇ」と茶化し居直ったのです。

田母神氏の論文発表前に政府が何ら手が打てなかったこと、また発覚後も田母神氏を厳しく問えないことなどは、文民統制すべき自民党政府が、侵略戦争を美化し、正当化する歴史修正主義的な考えでいるからに他なりません。
したがって田母神氏を問いただせないし、田母神氏も「(自分の考えは)二人の首相から支持されている」などと居直っているのです。この二人、森喜朗元首相と安倍晋三元首相が、共にその特異で危険な「歴史観・国家観」によって国民の批判を受け、短命で失墜したにも関わらずにです。

このような政府の態度では、いくら田母神氏を更迭しても、自衛隊はもちろん「靖国派」国会議員などに潜む戦前の「歴史観・国家観」の根本を正さない限り、「政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こる(憲法前文)」恐ろしい時代へ逆戻りしてしまうでしょう。

そうしないためにも、田母神元空幕長問題を決してうやむやにして幕引きをさせてはなりません。

【資料】『日本は侵略国家であったのか』田母神俊雄(防衛省航空幕僚長 空将)=「tamogamironbun.pdf」をダウンロード

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